日本軍の組織論的研究という副題の付いた『失敗の本質』は名著とされていて、座右の書とされている方も多いだろうと思いますが、私には何か日本軍の組織というものに焦点を当て過ぎたようにも思えてなりません。

 

確かに前の大戦において日本軍という組織はアメリカ軍との戦闘において目も当てられない惨状を呈し個々の作戦事例を見ても、もう少しマシな戦い方あったのではと感じさせるところが多々ありますが、同じ日本軍でありながら日露戦争の結果と大東亜戦争の結果を比べてみると明らかに戦略の違いが浮かび上がって来るのではないでしょうか。

 

ではその戦略の違いとは何なのか、ということが問題になりますが私が問題にするのは戦略というものを意思決定する前に生の情報(インフォメーション)というものが必要であり、そのインフォメーションという生の情報を戦略という意思決定に使えるように情報やデータを加工したインテリジェンスが必要になって来ますが『失敗の本質』では日本軍の組織ということに拘り過ぎてインテリジェンスということには触れられていません。

 

日本は大東亜戦争の前に大きな戦いを経験しているのは日露戦争であり『失敗の本質』で日本軍の組織を論じていますが、戦闘のやり方というのは陸軍は日露戦争の成功体験を踏襲し白兵銃剣突撃に終始し兵士の多大な損失を招き海軍は日露戦争においてバルチック艦隊との艦決戦戦に勝利した成功体験を踏襲し艦隊決戦により雌雄を決するというものでした。

 

ここまでは確かに日露戦争における勝利を成功体験とした日本軍の組織論的研究の成果といえますが、日露戦争と前の大戦において大きな違いは1902年(明治35年)に日英同盟が締結されており、日露戦争は1904年(明治37年)には英国の側面からの情報提供を受けバルチック艦隊の動きを日本海軍は把握していたことも日本海海戦の勝利の一因といえるのではないでしょうか。

 

日露戦争時は明石元二郎という軍人が中立国スウェーデンを本拠地として情報工作活動にあたり日露戦争の結果に多大な貢献をしています。

これ等と比べると前の大戦は相手を過小評価するだけでまともに情報収集さえしなかったのではないでしょうか。