小島直記の「伝記に学ぶ人間学」より、経営者に勧める伝記ベストテンということで選ぶポイントとして、人間形成に挫折体験そして人生と出会いに続いてのポイントを見ていきます。
お選びしたポイントの第四番目は、デシジョン・メーキングです。
あなた方が絶えずぶつかるところの意思決定の世界、決裁ということについての参考になる。
これは今までとダブりますが、とくに三番と四番が私はいいと思う。
三番はいま申し上げたように、伊庭貞剛さんのデシジョン・メーキングですが、四番よりも一番です。
ここで言われている三番、四番、一番というのは伝記ベストテンに挙げた順番のことで、初めての方は何のことか分らないと思いますので一番から順に挙げておきます。
 
池田成彬の『財界回顧』と『故人今人』、二番目が深井英五の『回顧七十年』、三番目は西川正治郎『幽翁』(伊庭貞剛の伝記)、四番目が石橋湛山の『湛山回想』、五番目が福沢桃介の『財界人物我観』、六番目が小林一三の『逸翁自叙伝』、七番目が竹越三叉の『大川平三郎君伝』、八番目が『自叙益田孝翁伝』、九番目が川田順の『住友回想記』『続住友回想記』、十番目が『山本条太郎』です。
池田成彬の意思決定。例えば、金子商店の融資を引き上げるというような決定ですね。それから、三井呉服店がうまくいかなくなって、日比翁助という自分の親友に金を貸して、三井呉服店の経営権を買わせるわけです。
そして、三越ということで発展するわけですが、発展した三越を見て、三井同族が怒るわけです。
「三井というわれわれの一族は、呉服店で起きたんだ。その由緒ある呉服店を他人に譲り渡すとは何事か」と言って、あとから文句を言う。
 
三井呉服店があったときは、全然経営できなくて、一言も口も入れないヤツらが、三越の繁栄を見て、文句をいって、池田成彬を呼び出して、ギュウギュウ絞り上げるところがある。
そういうことも書いています。私がとくに推薦したのは、そういうところです。
ドル買い問題、金解禁騒ぎは、この間、申し上げましたね。
いろんなところにデシジョン・メーキングの参考があります。
 
しかし、私がどうしても納得できないところがある。
小島直記が池田成彬の意思決定ということを評価しつつも納得できないところ、とは何かについては次回に見ていきます。
 
経営に行き詰まっていた三井呉服店を日比翁助が引き受け、呉服はもちろん、あらゆる商品を一括販売する三越百貨店に切り替え「今日は三越、明日帝劇」と言われる百貨店の代名詞になりました。
 
また、1927(昭和2)年3月三井銀行常務であった池田成彬はコール市場(民間金融機関が資金の貸し借りをする市場)から3千万円の資金を引き上げ非難されています。
不良債権の処理に対する正当な金融行為でありますが、超積極経営で銀行からの借り入れに頼っていた金子直吉の鈴木商店はこの影響を受けてしまいました。