伝記作家である小島直記氏の「伝記に学ぶ人間学」より「古典を活学する」とは、古典を現代人が役に立てる読み方をする勉強法という意味で桑原武夫先生の読書に関するアドバイスなどについて、小島直記氏の「伝記に学ぶ人間学」を基に前回4月18日の続きでみていきます。

以下、
小島直記氏の「伝記に学ぶ人間学」より

桑原武夫さんは、ついこの間、亡くなられましたが、新聞でも大きく取り上げましたから、ご記憶の方も多かろうと思います。
京都大学のフランス文学の先生で、スタンダールの『赤と黒』とか、『カストロの尼』という小説の翻訳もなさっていると同時に、いろいろな学者との共同研究によって、『懺悔録』『社会契約論(コントラ・ソシアル)』を書いたジャン・ジャック・ルソーについて、『ルソーの研究』という本を出しておられます。
また、同じく共同研究による『中江兆民の研究』があるわけです。

中江兆民は、ご承知のように、四国の土佐の出身で、明治の初めに大久保利通の力でフランスに留学して、日本に帰って『コントラ・ソシアル』の冒頭の部分を最初に訳した人でした。
私も非常に興味があって、読もうとしたことがありますが、歯が立ちません。
というのは、漢字で書いてあるので、全文絣模様を読むようで、原文を読んだほうがよっぽどわかりやすいからです。

私どもの教養のなさというよりも、日本における儒学研究を中心にした明治人の教養の内容と、私ども昭和十年代に大学教育を受けた者の教養の内容、さらに今日の皆様方の持っておられる教養の内容は、いろいろ違っています。
ことに皆様方は学校で漢文という学科がなかったお方たちですから、漢文に対する一種の拒絶反応があるのではないかと思います。

しかし『言志四録』は漢文で書かれています。
本当は全部漢字で書いてありますが、それをかみ砕いて書いたものも、現代の人には非常に難しいかもしれません。

私どもも漢文そのものは難しくても、それをある程度読み下しにしてあるとよくわかりますが、皆様方の場合も、あなた方の能力貧困ということではなくて、教育制度の問題、漢文を教科内容の中に入れなかった文部省の責任で、こっちのほうがよくおわかりになるだろうと思います。
そういうことで、中江兆民という人は、ジャン・ジャック・ルソーの『社会契約論』を漢文で訳した人です。


上記は
小島直記氏の「伝記に学ぶ人間学」より引用いたしました。

今回、引用した件では桑原武夫先生の読書に関するアドバイスとしては何もありませんが漢文というものを通して時代を反映した教養ということを考えさせられました。
それにしても中江兆民という人はルソーの社会契約論を漢文で訳すとは、まさに東洋のルソーですね。