火曜日のテーマである“失敗の本質”は前回2月26日までは1984年に発表された「失敗の本質」の共同執筆者でありビジネス誌に掲載された知識経営の野中郁次郎氏の「リーダーは、実践し、賢慮し、垂範せよ」を紹介・引用して来ました。
今回から同じビジネス誌に掲載された共同執筆者の一人で戦史研究家の杉之尾宜生氏の「失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちをくりかえしたのか」を紹介・引用し日本が陥った失敗の本質を掘り下げ検証していければと思っています。

以下、ハーバード・ビジネスレビュー January 2012(失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちを繰り返したのか・杉之尾宜生)より

失敗からいかに学ぶか―これは、軍隊に限った課題ではない。
いまなお企業不祥事が後を絶たないのは、組織が失敗の拡大再生産のスパイラルに陥るからである。
負の連鎖を断ち切り、失敗を組織の知的資産として活用するには、真実の解明こそが王道である。
そこで、本稿では、大東亜戦争において帝国海軍の犯した3つの過ちを取り上げる。

第1は、世界秩序のなかで日本がどのような地位を占めるべきかというグランド・ストラテジーを描けなかったことである。
そのため、武力戦という戦争におけるサブフィールドのみに注力し、戦略なき戦いの泥沼に陥った。
第2に、大鑑巨砲主義・艦隊決戦に固執するあまり国家の生命補給線であるシーレーン(海上交通連絡線)をアメリカ海軍に寸断され、資源供給の道が断たれた。
第3に、世界トップ・レベルの科学者を擁し、緒戦において質的戦力が日米拮抗していたにもかかわらず、その可能性と彼らの提言に背を向け、諸資源の戦略的活用を誤った。

これら3つの過ちが、失敗に至る遠因を形成したことは間違いない。

大東亜戦争が日本の軍事的敗北に終わり、三五年を経過した昭和五五年(一九八〇)から一一年間海軍軍令部OBが内密に集まって開戦に至る経緯を振り返った。
百数十回開催された極秘会合の内容は四〇〇時間の録音テープ、豊田隈雄(最終階級は海軍大佐)による膨大な量の会議録に残された。

これによって、戦争を経験しない世代は、帝国海軍の失敗から教訓を抽出することができる。
だが、彼ら海軍エリートは、なぜ、戦時にこれを行い、教訓として活かすことができなかったのか。

失敗からいかに学ぶか―これは、軍隊に限った課題ではない。
贈収賄や談合、粉飾決算、個人情報流出問題等々、いまなお企業不祥事が後を絶たないのは、組織が失敗の拡大再生産という負の連鎖に陥っているからだ。

ナポレオン戦争に従軍したプロイセンのカール・フォン・クラウゼヴィッツは『戦争論』において、「研究と観察、理論と経験は、相互にけっして排除し合ってはならない」と述べた。
彼はその根源が「批判精神」にあると喝破し、時の権力と権威を恐れず真実のみ語ることの重要性を強調した。

これを忠実に実行するのがイスラエル国防軍戦史部である。
かつて同部長に、イスラエル軍において戦史研究がどのような意味を持つのかを尋ねると、彼は「真実の解明なくしてイスラエルの生存はありえない」と強調した。

上記はハーバード・ビジネスレビュー January 2012(失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちを繰り返したのか・杉之尾宜生)より引用いたしました。

ここで海軍軍令部OBが内密に集まって、とされているのはNHKスペシャルでも取り上げられた所謂、海軍反省会のことですが確かに戦後35年も経って、しかも11年間に亘り百数十回も開催されるのなら戦時になぜ出来なかったのだろうと思うのは誰しもが感じるものだと思います。

逆に言えば真実の解明をするのに35年という年月を必要としたことが即ち失敗そのものであったということを裏付けているということなのでしょうか、このような観点で次回からハーバード・ビジネスレビュー January 2012(失敗の連鎖 なぜ帝国海軍は過ちを繰り返したのか・杉之尾宜生)を通して見ていきます。

今日は以上です。