昭和維新の思想的潮流の中で特徴的な血盟団事件を、その論理から葦津珍彦氏の「武士道(戦闘者の精神)」から前回5月20日の続きで見ていきます。
以下、葦津珍彦氏の「武士道(戦闘者の精神)」より
おそらく被告としては、これらの心情が、前年に企てられた十月のクーデター計画の幕僚たちとは、まったく異質のものであることを明確にしたいという理由もあったかもしれない。
それに血盟団の人々としては、そのころようやく流行してきた国家革新のプラン・メーカーを目して、いたずらに空論をもてあそび、将来の名利をもとめるに急であって、「現状打破」の真剣さに乏しいと見たのであろう。
そこでかれらは、政権構想もプログラムも「無い」ということを主張するのに力をいれた(この間の心理は、井上氏の獄中記で、中野正剛氏の新著「国家改造計画綱領」を評した文を見るとよくわかる)。
けれどもそれは、かれらに政治理想や政治目的がなかったのではない。
かれらはその理想が将来において実現することを希望したにちがいない。
しかし事件関係者の胸中の将来の政治理想が、すべての同士の間で一致していたわけではない。
かれらは現状否定の一線においては、固く一致していても、未来の理想については必ずしも同一のものでないことは、井上昭氏の獄中記「日本精神に生きよ」(改造社版)の中で、かれが権藤成卿氏について書いている一文を見ても明らかである。
ここでは、海軍側の先駆者藤井斉(少佐)が、権藤氏の「自治民範」を「天下無二の名著」と称して同志一同に読ませたこと、一部少数の同志の間に熱心な支持者の存することを認めているが、井上昭氏の立場からは、「数多い参考書」の中の一つで、「一長一短」をまぬかれないものと評価されている。
井上氏の思想は、主として仏教的な内省修業によって形成されたもので、山本玄峰老師の影響が深いと思われるが、その国家観などには、神道家今泉定助氏の教学も反映している(この二人は、いずれも血盟団の特別弁護人として法廷に立った人で、前掲の井上氏の著書にもとくに二人の写真が掲載されている)。
将来の国家革新の計画は、プラン・メーカーにまかせて、現状打開の一点に全生命を集中する、この井上氏の主張は、当時の人心に深い感銘を与えた。
それは多くの多様多彩な系列の政治理想を、まず破壊の一点に結集させた。
生きて権力を行使する地位に立つ考えのないということが、なによりも志士的な純粋性を証明するものだとの印象を与えた。
この思想は、その後の青年テロリストに、とくに強い影響を及ぼした。
上記は葦津珍彦氏の「武士道(戦闘者の精神)」より引用いたしました。
現状を変えるために現在の体制を破壊することだけを目的として一人一殺という戦いによって人心に訴えられればという思いがあったのではないでしょうか。
テロとの関わりでこの後も昭和維新について見ていきます。
今日は以上です。
以下、葦津珍彦氏の「武士道(戦闘者の精神)」より
おそらく被告としては、これらの心情が、前年に企てられた十月のクーデター計画の幕僚たちとは、まったく異質のものであることを明確にしたいという理由もあったかもしれない。
それに血盟団の人々としては、そのころようやく流行してきた国家革新のプラン・メーカーを目して、いたずらに空論をもてあそび、将来の名利をもとめるに急であって、「現状打破」の真剣さに乏しいと見たのであろう。
そこでかれらは、政権構想もプログラムも「無い」ということを主張するのに力をいれた(この間の心理は、井上氏の獄中記で、中野正剛氏の新著「国家改造計画綱領」を評した文を見るとよくわかる)。
けれどもそれは、かれらに政治理想や政治目的がなかったのではない。
かれらはその理想が将来において実現することを希望したにちがいない。
しかし事件関係者の胸中の将来の政治理想が、すべての同士の間で一致していたわけではない。
かれらは現状否定の一線においては、固く一致していても、未来の理想については必ずしも同一のものでないことは、井上昭氏の獄中記「日本精神に生きよ」(改造社版)の中で、かれが権藤成卿氏について書いている一文を見ても明らかである。
ここでは、海軍側の先駆者藤井斉(少佐)が、権藤氏の「自治民範」を「天下無二の名著」と称して同志一同に読ませたこと、一部少数の同志の間に熱心な支持者の存することを認めているが、井上昭氏の立場からは、「数多い参考書」の中の一つで、「一長一短」をまぬかれないものと評価されている。
井上氏の思想は、主として仏教的な内省修業によって形成されたもので、山本玄峰老師の影響が深いと思われるが、その国家観などには、神道家今泉定助氏の教学も反映している(この二人は、いずれも血盟団の特別弁護人として法廷に立った人で、前掲の井上氏の著書にもとくに二人の写真が掲載されている)。
将来の国家革新の計画は、プラン・メーカーにまかせて、現状打開の一点に全生命を集中する、この井上氏の主張は、当時の人心に深い感銘を与えた。
それは多くの多様多彩な系列の政治理想を、まず破壊の一点に結集させた。
生きて権力を行使する地位に立つ考えのないということが、なによりも志士的な純粋性を証明するものだとの印象を与えた。
この思想は、その後の青年テロリストに、とくに強い影響を及ぼした。
上記は葦津珍彦氏の「武士道(戦闘者の精神)」より引用いたしました。
現状を変えるために現在の体制を破壊することだけを目的として一人一殺という戦いによって人心に訴えられればという思いがあったのではないでしょうか。
テロとの関わりでこの後も昭和維新について見ていきます。
今日は以上です。