昭和十四年当時の日本がなぜ独伊と結ぶことになったのか、変転する国際情勢の中で日本の政府や軍部はどのように考えていたのかを半藤一利氏の「昭和史1926―1945」から前回4月14日の続きでみていきます。
以下、半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より
陸軍が当時、何を考えていたのかがよくわかる文書が残っています。
閑院宮(かんいんのみや)参謀総長が昭和天皇に提出した「日独伊協定締結に関する大本営陸軍部の意見」という長たらしい名前のものです。
ちょっと長々と引用してみます。
「本協定は元来、次期世界戦争に備えるをもって眼目(がんもく)となし、これに処(しょ)するためその規模と分野とに関し必然の運命を洞察しあらかじめ与国(よこく)と方略とを準備するものでありまして、その効果を自主的に利用すべきものと存じます。
これによりまして、我が方針に対する独伊の策応力(さくおうりょく)を増大せしめ、極東の負担を軽減し、もってドイツの実力策応により我が対北方戦勝を決定的ならしめ、またイタリアの存在により我が対南方措置を軽易(けいい)ならしむべきものと存じます。
その戦略上もっとも有利なる形態は、イタリアをもって英国を抑留(よくりゅう)しつつ、ドイツと協同してまず『ソ』邦を各個に撃破するにありまして、これをさらに一歩進めますれば三国の提携と国力の強化とに伴い、戦わずして逐次その効を収むることでござります。
この政戦略上における『ソ』英の各個撃破は、次期大戦の根本方略でありますと同時に、東亜新秩序建設に課せられたる問題でござります。
而(しこう)してこの方略は帝国の参加によりはじめて考え得られるものと存じます……」
つまり陸軍は必然的運命的に、次の世界大戦が起こると決めていて、同盟締結はそれに備えるためであるとし、あらかじめ同盟国とそれにどう対処するかを準備するべきだ。
ナチス・ドイツが猛烈な勢いで力をつけているから、ヨーロッパにおけるそのドイツの力を利用して、われわれのほうでは北方戦略つまりソビエトに対する戦略を有利に導こう。
そしてこれにイタリアを加えることによって、アジア方面の戦略も非常に有利になる。
要するに日本は、他人のふんどしで相撲を取ろうということなんです。
とても日本一国ではソ連だけで手いっぱいで、そこに米英が加わってはたまったものではない、そこでドイツ、イタリアと同盟を組み、その力を借りて日本の戦略を有利に展開したい、そのためにはどうしてもこの同盟を結ぶ必要がある、というのが陸軍の主張だったのです。
上記は半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より引用いたしました。
この「日独伊協定締結に関する大本営陸軍部の意見」というのを見ていますと言葉巧みな都合の良い作文という感じを受けますが日独伊協定と当時の国際情勢に対する捉え方があまりにも日本に都合よく動くとしか見ていないように思われます。
外の世界が見えていなかったのではないでしょうか。
今日は以上です。
以下、半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より
陸軍が当時、何を考えていたのかがよくわかる文書が残っています。
閑院宮(かんいんのみや)参謀総長が昭和天皇に提出した「日独伊協定締結に関する大本営陸軍部の意見」という長たらしい名前のものです。
ちょっと長々と引用してみます。
「本協定は元来、次期世界戦争に備えるをもって眼目(がんもく)となし、これに処(しょ)するためその規模と分野とに関し必然の運命を洞察しあらかじめ与国(よこく)と方略とを準備するものでありまして、その効果を自主的に利用すべきものと存じます。
これによりまして、我が方針に対する独伊の策応力(さくおうりょく)を増大せしめ、極東の負担を軽減し、もってドイツの実力策応により我が対北方戦勝を決定的ならしめ、またイタリアの存在により我が対南方措置を軽易(けいい)ならしむべきものと存じます。
その戦略上もっとも有利なる形態は、イタリアをもって英国を抑留(よくりゅう)しつつ、ドイツと協同してまず『ソ』邦を各個に撃破するにありまして、これをさらに一歩進めますれば三国の提携と国力の強化とに伴い、戦わずして逐次その効を収むることでござります。
この政戦略上における『ソ』英の各個撃破は、次期大戦の根本方略でありますと同時に、東亜新秩序建設に課せられたる問題でござります。
而(しこう)してこの方略は帝国の参加によりはじめて考え得られるものと存じます……」
つまり陸軍は必然的運命的に、次の世界大戦が起こると決めていて、同盟締結はそれに備えるためであるとし、あらかじめ同盟国とそれにどう対処するかを準備するべきだ。
ナチス・ドイツが猛烈な勢いで力をつけているから、ヨーロッパにおけるそのドイツの力を利用して、われわれのほうでは北方戦略つまりソビエトに対する戦略を有利に導こう。
そしてこれにイタリアを加えることによって、アジア方面の戦略も非常に有利になる。
要するに日本は、他人のふんどしで相撲を取ろうということなんです。
とても日本一国ではソ連だけで手いっぱいで、そこに米英が加わってはたまったものではない、そこでドイツ、イタリアと同盟を組み、その力を借りて日本の戦略を有利に展開したい、そのためにはどうしてもこの同盟を結ぶ必要がある、というのが陸軍の主張だったのです。
上記は半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より引用いたしました。
この「日独伊協定締結に関する大本営陸軍部の意見」というのを見ていますと言葉巧みな都合の良い作文という感じを受けますが日独伊協定と当時の国際情勢に対する捉え方があまりにも日本に都合よく動くとしか見ていないように思われます。
外の世界が見えていなかったのではないでしょうか。
今日は以上です。