世の中の社会的問題に対して、その解決を目的とした自立的なソーシャル・ビジネスの展開を通じての事業活動に取り組む社会イノベーターについて4月15日の日経新聞「イノベーション」で取り上げられていましたので紹介・引用いたします。

以下、4月15日の日経新聞「イノベーション」より

イノベーション 開拓者たち ③
イノベーションがもたらすものは、経済成長や富の創出に限らない。
最近世界的に脚光を浴びているのは社会イノベーター、すなわち様々な社会的問題の解決に創造的に立ち向かう人たちだ。
日本でも東日本大震災の復興支援などを通じて、厚みのある社会イノベーターの層が生まれつつある。

スピードを重視

マイクロファイナンス(少額金融)といえば、バングラデシュのような発展途上国の金融というイメージがあるが、震災後の日本でも大いに注目された。
その先駆けの一つが仙台市のベンチャー企業、アイリンク社長の斉藤浩昭(48)が立ち上げた「三陸牡蠣復興支援プロジェクト」だ。
一口1万円の拠出を募り、約2万人から2億8千万円を集めた。
その資金で津波で大損害を受けた三陸のカキ産地に、流されてしまったカキの稚貝や養殖用のロープ、水槽などを寄贈。
支援を受けたカキ生産者は北は岩手県宮古市から南は牡鹿半島の突端まで計341人に達した。
拠出者には一口当たり20個の生ガキを届ける計画だ。

斉藤はもともとカキのネット通販を手掛けていたが、生産者とそれほど深い結びつきがあったわけではない。
だが、被災地の惨状を目の当たりして、震災の約2週間後に自社サイトで支援策を表明。
類似のプロジェクトがまだほとんどなかったことから、メディアに大きく取り上げられ、支援の輪が一気に広がった。
斉藤が重視したのは公平さよりもスピードだ。
「支援要請があった産地に片っ端から資材や稚貝を送った。
行政の支援なら全産地を調査して、被害のひどい順に支援、ということになるのだろうが、時間を浪費すれば、それだけ浜の再生が遠のく」と考えたのだ。

緊急支援をほぼ終えた今、生産者有志と共同でフランス流のカキ養殖の導入に取り組む。
干潟の干満を利用する仏方式を採用すると、殻の形がきれいにそろったカキが育ち、単価の高い殻付きカキとして出荷できる。
フランス現地にも視察に行った。
「この計画が軌道に乗れば、震災前に戻る復旧ではなく、震災前より良くなる『復興』が見えてくる」と斉藤は力を込める。

岩手県釜石市でキッチンカープロジェクトを始めたのは、施設運営のプラットフォームサービス(東京・千代田区)会長の田辺恵一郎(54)。
東京王子ロータリークラブなどから支援を受け、津波で店を流された飲食店に「移動可能な店舗」のキッチンカーを貸与、焼鳥屋やラーメン店など6店舗が昨年6月以降営業を再開した。
大きな反響を呼び、店によっては一日の売り上げが百万円を超えたこともある。

キッチンカーに続く支援第2弾がコンテナ店舗だ。
無味乾燥なコンテナだが、飾り付けを施し、電源を引くなどすればおしゃれな店に早変わりする。
現在、津波に襲われた商店街の一角を整地するなどオープンに向けた作業が進行中。
今年11月ごろには美容院やケーキ屋、土産物店を開く計画だ。
コンテナ商店街はもともとあった店だけでなく、意欲のある新しい店も呼び込む。
「被災した商店街を活性化するには、既存の人たちばかりではダメ。新しい店を入れないといけない。これが神戸の震災復興などで明らかになった教訓だ」と田辺はいう。

カツラ安値調達

震災復興だけでなく、病気や医療の世界でもソーシャル・イノベーターの活躍の舞台が広がる。
その一人、ピア(浜松市)社長の佐藤真琴(35)は看護学校時代の経験に触発されて、がん治療で髪の毛が抜けた女性のためのカツラ事業を手掛ける。
通常のカツラは高すぎて手が出ない。
だが、カツラなしでは社会生活ができない。
そんな切実なニーズに応えるために5万円弱のカツラを用意した。
8年前に単身で中国・青島にあるカツラ産地に乗り込み、安値調達のメドをつけたのだ。
全国の患者に応えるために、各地の美容院など14店と連携する。
患者の負担増となる加盟料やロイヤリティーは取らない。
「昔は東京から浜松に来る人もいたが、カツラの着用にはメンテナンスも必要で、離れた場所では不便が多い。
連携店のネットワークを広げて患者さんの負担を減らしたい」と佐藤はいう。

ソーシャル・ビジネスの最大の課題は事業の継続性。
行政の補助や有志の寄付で事業を始めても、資金供給が途絶えると事業が続かなくなる。
理念がいくら立派でも、つぶれては元も子もない。
佐藤は「ピアは総勢6人の小さい所帯だが、絶対この会社をつぶしてはいけない。そんな気持ちをいつも持っている」という。
                                              =敬称略
                                        (編集委員 西條都夫)

上記は4月15日の日経新聞「イノベーション」より引用いたしました。

ソーシャル・ビジネス社会的課題の解決をめざすことと、ビジネスとしての事業性を両立させることが必要であり、そのためには社会的ニーズをビジネス・イノベーションにつなげる発想が求められるということではないでしょうか、解決を求められる社会的問題がイノベーションを促すということが企業の原点でもあると思います。

今日は以上です。