原発事故による電力不足などエネルギー問題に対して、いろんな取り組みがあるなかで排熱を利用することで循環して再利用することで省エネにつなげるという研究を3月11日の日経新聞「イノベーションより紹介・引用いたします。


以下、3月11日の日経新聞「イノベーション」より


イノベーション ここを攻めろ ⑨


「燃料代85%減」


「燃料代が85%減らせる。3年で元が取れる計算だ」。

北九州市若松区にある新日鉄エンジニアリングのバイオエタノール製造の実証プラント。

同社技術開発研究所の木内崇文マネジャーは、約1年間行った実証試験で強い手応えを感じていた。


バイオエタノールを含む水を熱して、エタノールを高濃度で取り出す蒸留と呼ばれる工程。

通常は燃料をたいて蒸留塔を加熱する。

しかしこのプラントでは、初期の加熱を除いては外から一切熱を加える必要がない。


原発事故による電力不足などで、工場やオフィス、家庭ではいっそうの省エネが待ったなし。

今回の手法は従来とは大きく異なる。

通常なら無駄に捨てられる熱に少し手を加えエネルギーとしての「質」を上げて、繰り返し使えるようにするアイデアだ。


エネルギーの中で仕事に使える部分を「エクセルギー」といい、その割合をエクセルギー率と呼ぶ。

様々な形で存在するエネルギーの中で、電気や、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料のエクセルギー率は高いが、こうした燃料を燃やして熱にするとエクセルギー率が下がって「質の低いエネルギー」になる。


エネルギーには保存則(エネルギー保存の法則)があるため、その総量を増やすことはできないが、質を高める方法はある。

新日鉄エンジの場合、圧縮機という装置を使い、プロセス中の蒸気に圧力をかけて温度を上げる。

エクセルギーが高まった高温の蒸気を再び使えば、外から熱を加えなくても済む。


「自己熱再生」と呼ばれるこうした方法は、東京大学生産技術研究所の堤敦司教授が5年ほど前に提唱。

同研究室で企業と連携して化学プラントなどの応用を目指して、工程の設計などを進めてきた。

新日鉄エンジはその最初の実証例となった。


この方法は「熱を利用するプロセスなら何にでも応用できる」(堤教授)のが特徴。

従来の省エネ技術と比べて、石油化学のナフサ脱硫、二酸化炭素(CO)の分離、水分含有量の多い石炭を乾燥させるなどでいずれも7割以上の省エネや燃料の節約が可能になるという。


「産業へ波及効果」


「エクセルギーを再生する技術がようやく理解されてきた。専門家からも理論的にありえないと言われたこともあった」。

こう語るのは九州大学研究院で燃料電池を研究する石原達己教授。

燃料電池の中でも、最も将来性があるとされる固体酸化物型燃料電池(SOFC)の第一人者だ。

「ありえない」と言われていたのは石原氏が提唱する、SOFCを使って工場などで無駄に捨てられている熱を回収して、エクセルギーを再生する技術だ。


SOFCの特徴は、燃料に純粋な水素を使わず、都市ガスのメタンなどから直接電気が得られる点だ。

石原氏のSOFCもメタンを燃料に使う。

ユニークなのはメタンを水素や一酸化炭素といったエクセルギーの高い燃料ガスに変えられることだ。

もちろん発電も行う。

外部の熱を取り込みながら反応が進むので、ここで排熱を有効に使えるという理屈になる。


石原教授はさらに、酸素と水素から電気を作る燃料電池を逆方向に動かすことで、排熱の回収をしつつ水素を作り出す方法を開発している。

無駄に捨てるしかない熱からエクセルギー率の高い燃料が得られる。

東芝なども同様の狙いから、排熱を水素などの形に変えて有効利用する研究開発に乗り出している。


エクセルギー再生に詳しい中垣隆雄早稲田大学淮教授は「既存の化学プラントや発電装置を大きく変えず、追加の設備を設けるだけで大幅に燃料を減らせる。

産業への波及効果も大きい」という。


省エネの工夫を重ねてきた日本の産業界には「乾いた雑巾はもう絞れない」という声も聞かれる。

エネルギーの質を上げるという全く新しい発想によるイノベーションで、新たな突破口が開かれる。

                                  (編集委員  吉川和輝)


上記は3月11日の日経新聞“イノベーション”より引用いたしました。


無駄に捨てられる熱をエネルギーとしての「質」を高めて再利用出来れば省エネだけでなく新たなエネルギーとしても期待したいものですね。

今日は以上です。