ニ・二六事件に際し、陸軍中央の幹部と現場の青年将校との事件に対する対応について、いつもの様に半藤一利氏の「昭和史1926―1945」を前回6月18日続きで見ていきます。


以下、半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より


陸軍中央の混乱が察せられますが、部隊は陸軍大臣の告示をもらって大喜びです。


決起の趣旨が天皇陛下の御耳に入った、その意図を陛下はちゃんと理解され、この行動が日本の国体を守りしっかりしたものにするための熱烈なる想いに基づくものと認める、というわけですから「わが事成れり」、自分たちの行動は是認されたと喜んだのです。


同時に「第一師団命令」が出ます。

決起部隊は皆、第一師団の傘下ですから、第一師団長が

「お前たちは現状においてあまり余計な行動をするな。

いずれこちらから指示するから」

と、とにかく穏やかに治(おさ)めようとしたわけです。


ところがいずれも作文でしかないのですね、大元帥陛下がそんなことを許可するわけはないにもかかわらず、決起部隊は小躍(こおど)りし、何だかわからないうちにその日は暮れていくのです。


部隊は早くも「官軍」として首相官邸はじめ赤坂や永田町一帯を占拠し悠々としていて、がたがたしているのは陸軍中央ばかりです。

そこで陸軍のお偉(えら)方が陸軍大臣官邸に集まり、また香田、村中、磯部、対馬、栗原など青年将校の幹部もやって来て会談します。


何のことはない、早く矛(ほこ)を納(おさ)めて帰れよ、といいたいばかりの会談なのです。

荒木大将などは

「お上(天皇)はどれだけ御軫念(ごしんねん)になっているか、考えてもみよ」

というようなことしか言わない。

将校たちにすれば

「何を言うか、俺たちは官軍であって、宮城一帯を守っているのだ」といわんばかり。


しかし実際、天皇はこの日だけでも十二回、本庄侍従武官長を呼びつけて

「早く鎮圧せよ」と督促しているんです。

そんなことは伝えられるわけもなく、将校たちは

「天皇陛下はわれわれの気持ちをわかってくださっている、革命は成功した、新しい時代が来るに違いない」

と信じていたお粗末さでした。


これが事件の第一日目です。

ですが話はもうこれで終わっているんです。

あとは、いかにして決起部隊にお戻り願うか、だけなのです。


上記は半藤一利氏の「昭和史1926―1945」より引用いたしました。

今日は以上です。