昨日の日経朝刊のけいざい解説というコラムが現状の金融危機に示唆を与えてくれる感じがしました。
読まれた方はもう一度吟味して、まだ読まれていない方はゆっくりと目を通していただければと思いますので日経の焼き直しと言われるのを承知の上で紹介させていただきます。
けいざい解説 編集委員 実 哲也
戦前の代表的な自由主義者で知米派の清沢 洌(きよし)は、一九ニ九年秋の株価暴落から大恐慌へなだれ込む米国の姿を現地でつぶさに観察している。
「(米国を)何よりもその経済力で見ていた清沢がこのような状況に立ち会うこととなったのはまことに皮肉であった」(北岡伸一著『清沢 洌』)。
だが、日本の知識人の間ではやった米国の没落論には最後までくみしなかった。
所得格差などの問題を認識しつつも、勤労精神など米国の底力への信頼を崩さなかったからだという。
大恐慌が世論に与えた衝撃は大きかった。
米国と対照的にナチスドイツの統制経済やソ連社会主義が活気を見せ、新モデルに引かれる知識人が増えていった。
大恐慌以来の規模という米国発の金融危機。経済だけでなく、時代認識にも影響を及ぼしている点は当時と同様だ。
「金融依存の米国型資本主義の終幕」 「自由放任から政府主導の時代へ」との声が飛び交う。
歴史が一つの節目を迎えているのは確かだろう。だが、危機の時こそ何が変わり、何が変わらないかを冷静に見定め、しっかりとした軸足を持つ必要がある。
オバマ政権が登場しても米国経済がしばらく泥沼から抜けられず、混迷や衰退がさらに目立つのは避けられまい。
その過程では大規模な財政刺激策から金融機関や自動車メーカーへの支援まで、政府がなりふりかまわず市場に介入する政策が取られる公算が大きい。
ただ、これをもって米国の経済路線の歴史的転換と見るのはどうか。
「オバマはプラグマティスト(現実主義者)。自由放任で格差放置のブッシュ流は否定し景気対策に全力を挙げる。だが、基本は市場機能や競争を重視する考え」とブルッキングス研究所のボズワース上級研究員は語る。
自由な市場の重視は米国にとってイデオロギーではなく、成長の方程式そのもの。
グーグルをはじめ新興企業が一気に大勢力になる自由な競争環境やそれを可能にする効率的な金融市場が米国を支えてきた。
過ちの修正はあってもその芽をつぶすことはありえない。
翻って日本。金融が暴走した米国と置かれた環境は大いに異なるが、米国の失敗の教訓が拡大解釈されつつあるようにもみえる。
「金融市場強化だ、対日投資の拡大だといっても耳を傾けてくれない」とある経済官僚は言う。米国の物まねより、景気をよくする方法を考えろというのが大方の政治家の反応らしい。
福田康夫内閣時代の六月に経済財政諮問会議がまとめた経済成長戦略には金融市場の強化、対日投資拡大のほか、規制改革や高度人材の受け入れなど成長力強化策が盛り込まれている。今はそうした改革の旗振り役は政権に見あたらない。
魅力ある強い金融市場づくりは日本の膨大な貯蓄をいかし、技術を持った企業を伸ばすのに不可欠。
世界不況でもグローバルなおカネや人の動きは止まらず、海外の力を呼び込む対内投資はどこの国も熱心だ。
景気対策は重要だが、それだけに明け暮れていたら「グローバル化への対応にまた出遅れてしまう」と大田弘子前経済財政担当相。
世界が景気対策と規制強化だけ考えているような幻覚に陥らないにしたい。
以上です。