今日も伊藤 肇の「喜怒哀楽の人間学」です。
今日は偉い人のゴシップの話なので役に立つかどうかは解りませんが、昔の話でもこういうことがあったんだと思うと面白いものですね。
それでは今日も皆さんと一緒に見ていきましょう。(この本は昭和53年に書かれています)
以下、本文
明治維新成って、権勢の中心にあった総理大臣、伊藤博文の側近たちが氷川の勝海舟の許へやってきて、しきりに伊藤博文の悪口をいう。
「ふん、ふん」ときいていた海舟は最後にたずねた。
「お前さんたち、いま、わしにいったような批判を伊藤の前でじかにいえるかい?」
「そりゃ、とてもいえたものではありません」
「そうだろう。伊藤はもともと、聡明な人なんじゃよ。けれども、お前たち側近が誰も苦言を呈せず、調子のいいことばかり耳に入れとれば、いくら賢くても、三年も経ちゃ、バカになるのが当たり前だよ」
聡明な人間がどれくらいバカになるか。
福沢桃介が、その著『財界人物我観』の中で紹介している日銀三代目総裁、川田小一郎の格好のゴシップがある。
芸者のおしめが、川田のことを「総裁、総裁」と人がいうものだから、大いに怒り、「惣菜、惣菜と旦那様のことを野菜物扱いするとは怪しからん」と川田に訴えたというので、それ以後、川田は殊におしめをかわいがったという話だ。
また、横浜の紛争解決にのり出した時、横浜の巨商連がきて、川田に「閣下、閣下」と連発した。
これを側できいていたおしめが「またしても、カッカ、カッカと総裁様を蚊の仲間扱いするのは怪しからん」と怒ったものだ。
川田は笑いながら「閣下というのは総裁以上の尊称だ」と説明して、大変に御機嫌だった。
「惣菜」といい「カッカ」といい、おしめは胸中に、その意味は十分、了解していたんだろうが、しらぬ顔で怒ってみせ、まんまと川田にとり入った腕の凄さは川田以上だ。
今日は以上です。