昨日、米証券大手リーマンブラザーズの破綻を書き、今まさに市場の裁きを受けているAIG、「危機」はまだ続いているとしましたが16日、米政府・連邦準備理事会(FRB)はAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)に約9兆円のつなぎ融資を実施すると決めました。


ポールソン財務長官は「モラルハザード(倫理の欠如)を軽視できない」として公的資金による個別金融機関の救済に極めて慎重な姿勢を示したばかり。FRBもAIGからの融資要請をいったんは突き放した。


最終的に公的支援を選択したのは、民間主導でのAIG支援が不調に終わり、AIGの破綻が現実味を増し、世界経済の「破局」の可能性が高まったからだ。


この経過までにはいろいろあると思いますが、エコノミストで野村総研の主席研究員のリチャード・クー氏がNIKKEI BizPlusのコラム、Koo理Koo論で面白いことを書いていますので一部を紹介させていただきます。


尚、この「なぜ米政府はサブプライムで銀行救済に乗り出さないのか」は9月16日に書かれています。


以下、コラム本文(一部)


今の米国は、ファニーメイとフレディマックというGSE(政府系住宅金融機関)2社には資本投入のスキームが作成されたものの、一般の民間金融機関に対しては、まだそういう話になっていない。


<タイミング悪かった「宮沢首相の公的資金投入」発言>


何より皮肉だと思ったのは、今年2月に東京で行われたG7での出来事である。

額賀福志郎・財務大臣(当時)がポールソン財務長官に向かって「早く資本投入をやるべきだ」と言っていた。

ところがポールソン財務長官が逃げ回っている。

何もやらないというわけではないが、「まず民間に任せて政府はコミットしない」という姿勢だ。しかし、この構図は1996年の日米の構図と立場が全く逆になっている。


あのとき米国が日本に対して早く資本投入しろと言っても、日本は逃げ回っていた。なぜ97年まで資本投入できなかったのかというと、92年の苦い経験があるからだ。


92年に宮沢喜一首相は「早く資本投入をして、公的資金で銀行の問題を片付けなければならない」と発言した。

その結果、何が起きただろうか?日本中から「銀行を救うなんてとんでもない」という凄まじい銀行叩きが始まったのだ。一部のマスコミが先導し、それに日本中が乗って国民的スポーツの様相を呈した。


その結果、宮沢氏はその決定を取り下げなければいけなくなり、その後、日本の政治家は誰一人としてそれを言えなくなってしまった。タブーになってしまったわけである。そこから6年間、日本は結局何も出来なかった。

日本の場合、銀行の貸し出し態度は極めて積極的だったので、銀行に問題があっても、経済に実害があったわけではない。

しかし、その間も不良債権は増え続けた。そして、97年に貸し渋りが発生して、ようやく国民がその痛みを感じた。そこで、やっと資本投入の話が出てきて、第一次資本投入となった。


このように、政府による資本投入というのは、国民が痛みを感じるまではきわめて難しいのである。


<米財務長官が「政府による資本投入」を発言控える理由とは>


そして、今の米国も全く同じ状況である。ウォール街の人達の給料と米国の平均給料の差額というのは、日本の100倍くらいある。

「あの高給取り連中を救うために、なぜ一般の人々の税金を使わなければならないのか」という声が出てしまうと、出来ることも出来なくなる。


宮沢氏があの時期に言ってしまったために、6年間も何も出来なくなってしまったわけである。おそらくポールソン財務長官もこれをわかっている。

間違ったタイミングで喋ったら、出来ることも出来なくなる。だから今は喋れない。自分から「やりましょう」とは言えない。実際にはベア・スターンズ救済の件で、当局の金がかなり入っているのにもかかわらず、である。


私はベア・スターンズ救済の発表直後に米上院で開かれた公聴会をケーブルテレビで見ていたが、財務省の担当者らが上院議員からボロクソ言われていた。「何故あんなものをつくったのか。もっとお金の有効な使い方はなかったのか」などと問い詰められたのだ。


その公聴会に出ていたのはバーナンキFRB議長、スティール財務副長官、コックス証券取引委員会委員長、ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁。この4人が「あの段階で救いの手を差し伸べなければ、米国の金融は崩壊していたかもしれない」と一生懸命説明していた。


しかし、上院議員の反応は「たった1社の証券会社が潰れるだけで米国の金融システムが全部潰れるくらい状況が悪化するまで、あなた方はこれまで何をしていたのか。そんな状況になるまで昼寝でもしていたのかというものだった。


ポールソンは日本の失敗も十分理解している。だからこそ、今は民間への資本投入はできない。今やって、反発が出たら、本当に事態が悪化しかねないという状況ではないだろうか。



以上です。