金融誌に掲載された地域金融マーケティング研究会客員研究員(北陸銀行)の中島 和彦氏の「越中富山の薬売りとOne to Oneマーケティングの意外な関係」という記事を昨日の続きで紹介させていただきます。


以下、本文


One to One&CRMマーケティングの失敗


「One to Oneマーケティング」は、「マスマーケティング」に代わる新手法として、D.ペパーズ/M.ロジャーズが提唱したもので、日本で注目されるようになったのは、九五年にペパーズらが著した『ONE to ONEマーケティング』の翻訳が出版されてからである。


しかし実は、このOne to Oneマーケティングは、富山の売薬のシステムをヒントにして生み出されたといわれているニ一世紀の世界で認められた新しいマーケティング手法の原型が、江戸初期の日本にすでに存在していたのである。


マスマーケティングが顧客をマスでとらえ、それを属性や傾向などの共通項から絞り込み、顧客ターゲットを設定するというアプローチであるのに対し、One to Oneマーケティングは顧客を個としてとらえ、顧客起点の個別アプローチを行う。

前者が新規顧客を獲得することをおもな狙いとするのに対し後者は既存顧客との双方向で継続的な関係維持を重視したものである


九〇年代後半には、CRM(顧客関係性マネジメント)の概念も日本に輸入された。

CRMは、アメリカで開発されたマーケティング手法で、その起源は、営業担当者のスケジュール管理ツールであり、知恵の源でもあるスケジュール手帳にあるといわれている。


本来、自社の課題の分析と方向性の判断はトップマネジメントが行うべきものだが、多くの企業では情報システム部等が主導してCRMソリューションの導入を進めた。その結果、CRMは十分な成果をあげられず、失敗を繰り返してきた。


マスマーケティングの行き詰まりを打破してくれるリリーフエースとして投入したOne to OneマーケティングやCRMも、期待したほどの成果をあげられない…。

企業のマーケティング担当者や情報システム担当者がOne to OneマーケティングやCRMに対して疑念を抱くようになったのは不思議ではない。


しかし本来、One to OneマーケティングやCRMは、商品やサービスを提供する企業が顧客との間に、長期的・継続的な「親密な信頼関係」を構築し、その価値と効果を最大化することで、顧客のベネフィットと企業のプロフィットを向上させることを目指す総合的な経営手法である。


顧客との継続的な取引を追求するには、高度経済成長期の「商品・サービスありきのビジネスプロセス」から、「富山の置き薬」の商いの理念にすでに存在していた「顧客起点のビジネスプロセス」への全面転換を図ることが重要である。



以上。



明日に続きます。