今日も土、日雑感の土曜日がやってきました。

いつもの様に伊藤 肇「喜怒哀楽の人間学」を皆さんと一緒に見ていきたいと思います。(この本は昭和53年に書かれています)


行動をささえた箴言


「出処進退」に関する箴言を書いておきたい。自分が迷った時、ここを開けば、事に臨んで明確なる裁断をたすける何かがあるはずである


英傑、大事に当たりては固(もと)より禍福生死を忘る。

而(しこう)して、事、適々(たまたま)成れば、則(すなわ)ち亦或(またあるい)は禍福生死に惑う。学問精熟の君子に至りては則ち一なり。

                           

                           大塩平八郎  『洗心洞剳記』

<英雄豪傑というものは、非凡な気迫や力量や才能をもって天下の功業を争うものだが、多くは時の勢や客気にまかせて、深く心を練るというようなことをしない。


このため、何か、事に当って、自分の全知全能を傾け、全く、余念の生ずる余地がない時はいいが、ひとたび、問題が片づき、ふと心の弛みが生じた時、事、志と違って「禍福生死に惑い」だすと、自ら関するところが大きいだけに混乱も大きく、下手をすれば命とりとなる。


これを防止するためには、英傑たる者は功名富貴を目的とせず、「学問精熟」を旨とし、英傑自らが君子になるか、あるいは君子を師とするかの何れかでなければならない>



雲―大事を做(な)しだすもの、必ず跡あるべからず。跡あるときは禍、必ず生ず。跡なき工夫如何。功名を喜ぶの心なくして做(な)し得べし。


水―是も亦是(またぜ)なり。功名を喜ぶの心なきは学問の工夫を積まざれば出まじ。周公の事業さへ男児分涯(だんじぶんがい)のことをする程の量にて、始めて跡なきようにやるべし。

然(しか)らざれば、跡なき工夫、黄老清浄の道の如くなりて、真の道とはなるまじ。細思商量。

                             松浦静山  『甲子夜話』


<雲―跡とは、何かを行った後に残るしるしである。大事をなす時は、そういう形跡があってはならない。跡があると、必ず、禍が生ずる。ではどうするか。功名を喜ぶ心を捨てきって、無心でやった時、はじめて出来ることかもしれませんネ。


水―お説の通りです。これはよほど学問を積まなければできないことです。千年王国といわれた周の建国という大偉業をなした周公旦の事蹟も男一匹の仕事をする程の度量があって、はじめて跡のないようにやれましょう。


そうでなければ、いわゆる「黄老―老子―清浄の道」で一種のニヒリズムに堕してしまっては真の道とはなりません。この点、こまかに思索し検討されたい>



今日はここまでにして明日に続けます。


お疲れ様でした。