土、日雑感の土曜日がやってきました。

今日も伊藤 肇「喜怒哀楽の人間学」を皆さんと一緒に見ていこうと思います。(この本は昭和53年に書かれています)


それでは今日もよろしくお願いします。


退いて後継者を選ぶ」「仕事に対する執着を断ちきる作業」というこの二つの人間くさい作業をやりおおせただけではまだ完璧とはいえない。


退く時は自ら決せよ

それは出処進退の大原則を実践しなければならぬからだ。

その原則というのは「進ム時ハ人マカセ。退ク時ハ自ラ決セヨである。


越後長岡藩の家老、河井継之助の一言である。司馬遼太郎の小説に『峠』という名作がある。これは河井継之助を主人公にして描いたもので一読をすすめたい本でもある。


せっかく、「困難な二つの作業」をやっておきながら、「退」を人に相談したのでは茶番劇となる。

「辞めようと思うが、どうか」という相談を受けて、「いい時期だから、おやめなさい」などという奴はまずいない。

「まだ、まだ、おやめになるのは早すぎますよ」と止めるにきまっている。それをいいことにして、ずるずるべったりに居座ったら、間違いなく老醜をさらすことになる


実例がある。

かってサッポロビールの松山茂助(故人)が会長となった時、堂々と『中央公論』の「経営特集号」に一文を寄せた。


「以前から辞めたいとは言っていたのだが、社内では誰も賛意を表してくれない。

ま、ありがたいことだが、人間は適当な時期に出処進退を考えるべきだし、後継者も育てなければならない。新しい社長ができても、世のなかに認めてもらうにはニ、三年かかることを考えれば、跡目をつくるのは私の重要な責務だ、そう考えて社長を辞めて会長になった」


人心の機微を辛辣に抉る政治的天才、ニッコロ・マキャベリは「君主は民衆の支持を得ていると錯覚してはならない。

彼らが『わが君のためには死をも辞さぬ』というのは、死を必要としない時だけである」と警告しているが、側近あるいは部下から、「社長がおいでにならなかったら、わが社は闇です」などといわれた、それを丸のみにするような社長は、それだけでトップたるの資格はない。


この松山茂助の出処進退のまずさが、後に血で血を洗うお家騒動を誘発し、サッポロの業績を一時、悪化させた。


住友の名総理事といわれた伊庭貞剛の台詞ではないが、「人の仕事のうちで一番大切なことは後継者を得ることと後継者に仕事をひきつがしむる時期を選ぶことである

これがあらゆる仕事中の大仕事である。後継者が若いといって、譲ることを躊躇するのは、おのれが死ぬということを知らぬものだ



今日は以上です。


お疲れ様でした。