【side M】
65億の人達の中で、今、ここに生まれてくる確率。
出会う確率。
言葉を交わす確率。
そして
こうやって手をつなげる確率…。
「ありがと」
溢れ出すいろんな想いをこめて
つぶやくだけで精一杯。
『…おう』
返事の声も揺れてた。
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【side D】
待ち合わせの場所は家がいいというから
遅くなった稽古の後、急いで明かりのついた部屋に戻った。
向かい合わせに座ってケーキの揺れるろうそく越しの
おめでとうの笑顔と、ちょっとしたプレゼント。
普通にハッピーバースデーを歌って、
変わりない風に進んでいくかと思ったら、
まおが不意に立ち上がると、テーブルを回って
俺の横に立った。
「ありがと」
俺の手を取ってつぶやいた、その指に光るリング。
「俺と…いっしょに居てくれてありがと…ね。大ちゃん」
ゆらゆらと揺れる声。
『…おう』
逆だよ。
俺がプレゼントの礼を言わなくちゃなんないのに、
お前が言ったら俺の言う言葉なんて無いだろ。
こんな声で情けないけど。
出会う確率。
手をつなぐ確率。
『愛してるよ』
そう言って、
こんな涙目の綺麗な笑顔が返ってくる確率。
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【駄文士より】
どれだけの分岐を間違わずにまっすぐ辿れば
望む誰かの手をとることが出来るのか。
天文学的数字の偶然と必然をたぐって巡り合う。
それは奇跡にも似たこと。
我々が二人を知った事もその奇跡のひとつならば
感謝しかありません。
お誕生日おめでとうございます。
ずっと、の、幸せを願います。