鬼ノ池に、大きな卵が浮かんでいます。
「今回はえらい早いなぁ」
 つい先日、池に浮かんだ卵から一匹の小鬼が生まれたばかりです。
 しかも、生まれた小鬼は二本角。
 鬼の力の強さは、角の数で分かります。
 夜叉丸は自分の一本角を撫でてから、フウと息を吐きました。
「全然卵が現れん時期もあれば、今回みたいにぽこぽこ現れることもあるか。気まぐれな池やなぁ」
 果たして、今回の卵からはどんな小鬼が生まれてくるのでしょうか。
「お姫さんと豆蔵はえらい張り切っとったなぁ」
 鬼と人が紡いできた歴史は複雑で、今も争っている者たちがいます。
 この山は今の所結界に守られていますが、これからどうなるかは分かりません。
「――ま、なるよぉにしかならんな」
 早口言葉のようなことを呟いて、夜叉丸はトンと地面を蹴って跳びました。
 とん、とん、とん――。

「ただいまぁ」
「むー!」
「おかえりなさい」

 《終わり》
日常と共に