イーモウの開会式 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

北京オリンピックの開会式を見た。

豪華絢爛、一糸乱れぬ群舞と人海パフォーマンス。
これぞ中国! を誇示するに充分、圧倒された。
あの国から私たちは漢字をいただき、
茶を知り、食を真似、こんにちがある。
開会式を見ながら
改めて偉大なる中国を想い、敬意を表しながらも、
なんだか私、複雑でしかたがなかった。
中国という「パンドラの箱」を開けたのではないか…?

開会式の演出はチャン・イーモウ。
その昔、彼は私の好きな映画を撮る人だった。
『紅いコーリャン』『あの子をさがして』『初恋のきた道』、
中国の小さな農村の、小さな出来事、
どれもスクリーンに映るだけで私は胸が締め付けられ、
独特の色彩映像に涙したものだった。

そんなイーモウがある時、
『大作歴史アクション』を撮ったから驚いた。
180度の転身として映った その映画『HEROS』は、でも、
まったく駄作ではなく、素晴らしいエンターテイメントだった。

ただ私は『HEROS』で感じてしまった。
「イーモウは これからは国のために映画を撮るんだろう」
落胆したのではなく、映画人としてのひとつの選択であり、
中国の映画マーケットの拡大や後身育成を視野に入れると
むしろ正しいのではないか、と。
ただ正直、寂しかった。企業人の道を選んだイーモウが。

狂ったように花火が打ち上げられた北京オリンピックの開会式。
同じ日、ユーラシアではグルジアが緊迫し、
震災の地・四川では眠れぬ夜を過ごした人がいたという。
もしも…
もしも、あの頃の…
小さな村を愛したイーモウならば、
どんな開会式を演出しただろう?
かつてのイーモウは大輪の花火ではなく、
いつまでも消えない線香花火を撮る人だった、
そんなことを思っていたら、ふつふつと、
好きなイーモウの映画の場面が頭に浮かび、
気が付けばテレビのスイッチを切っていた。

北京オリンピック開幕かぁ…。
パンドラの箱は開いたんだろうか。
ならば、どうぞどうか、伝説が真実でありますように。
最後の最後、箱から飛び出すもの、それは希望。

そういえば、私の好きなイーモウの映画も
ラストには淡い希望がただよってる。


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