パンズ・ラビリンス |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『山羊的迷路』
わたしのことかぃな???



息絶えたら天国に行く、
というのは西洋の思想で、
この日本の地に生をうけた私は子どもの頃、
「死んだ人は草葉の陰にいる」
と、今は亡き伯母からきいたものだった。
たとえ身体は朽ち果てようと、
魂は地下に留まらず、
そこへ根を張る 草や葉や樹木に宿る、
私は幼い頃から、そう受け止めていて、
だから、私は緑が大好きだ。
緑を育む大地や土も好きだ。
特に人よりも長生きしていそうな大木は
「目には見えない生き物」や
「ご先祖さま」を知っているので敬わなければいけない、
こんな想いが頭に沁み付いていて、
そのせいなのか…私は緑を育てるのが好きだ。

猫の額のようなベランダで、
わずかながらの緑を育て、種を採り、
小さな空間の土を掘る。
土を掘り返していると、ときどき
得体の知れない虫がワサワサと出て来たり、
思っていた以上の根っこが出て来たりして、
もうドッキリ★ 恐かったりドキドキしたり、
ふだんは忘れてしまっている地下の生の様子が伺える。
そうして、光の差さない世界には、
私の知らない「もうひとつの世界」があるんだと
しばし果てしない想い耽るのだ。

たとえば、宮崎駿監督のいう「もののけ」だとか、
おとぎ話に出てくる妖精のようなものは、
大人となった今の…いえ、今でも私は
精霊の化身ではないかと思っている。
つくづく伯母の教えから逃れられないわけで…。
な~んて戯言は、私の妄想?想像?空想?
幻の世界に逃げているの?

「逃げていない」とは言い切れないけれど、
私が常々思うこと、それは素敵な人というのは
「思いやり」のある人だと。
自分以外の誰か、
自分のいる国以外の「よその国」を思いやれ人、
そういう人に憧れるし、私もそうありたいと願う。

映画『パンズ・ラビリンス』は
妄想と想像と空想が入り交じった素敵な創造世界。
光の差さない地下に光を求めた少女の、
清らかな「思いやり」に満ちた傑作だった。
草葉の陰と云われた地下は
私にとっては未知であり、近しいもの。
地下と地上を繋ぐものは 緑茂る植物ですね、
私にとっては。天からやってくる水や光は
あまりに遠くて気高く、神々しいものなのです。



★★★★★★☆ 7点満点で6点
映画の冒頭から、いきなり「死臭」が漂い、
「はたして映画が終わった時、誰が生き残っているんだ?」
そんな思いを抱きながらビクビクして観てた。
2時間という枠を最大限に生かした傑作だと思う。
で、生き残ったのが“彼等”かぁ。納得です。
ヒロインの少女の結末は予想通りだった、
そうなるしかないなぁって、最初から感じてた。

私はファンタジーという枠でくくられる作品が苦手だ、
が、この映画はファンタジーという形式を装った
限りなくリアルに近いフィクションだと思う。といいつつ、
人はファンタジーと孤立無縁では哀しい生き物だ、とも思う。

ファシズムに傾倒する大尉と
山羊の化身・パンのいるお伽話に傾倒する少女、
圧政に反発するゲリラたち。
いずれも妄想、空想、創造、理想、
この境目のないファンタジーの世界で支えられている。
が、私が素敵ではないと嫌う「思いやりのない人」は誰なのか、
答えは明らかで、救い様のない終焉を迎えることになる。
一見すると悲劇的な結果をもたらせらた人物には、
きちんと救いの世界が描かれている。でも、
これが幸か不幸か…一概に言えないのが この映画のすごさ。

この映画がリアルだなぁと思うのは、
どの登場人物にも「弱さ」を描いているところ。
極悪非道の人として描かれるファシズム大尉ですら、
しかと「弱さ」を見せてくれる。

死と生を同一線上に描いた作品が好きだ。
この映画はまさしくそれ。生と死は一体のもの。
地下=闇=死=寓話と
地上=光=生=現実をリンクさせて展開する巧さ、いいわ~。
ジブリ作品に私があまり共感できなくなったのは、
地下を描かず天を仰ぎ見る視点に飽きたのかもね。
この映画では「現実」の方が劇的に描かれている。
これが何を意味するのか、と私なりに考えてみたら、
「現実は過酷だ、それでも生きよ!」というメッセージでは?
映画の背景となっているスペイン内戦と同じ状況が
現代にも、きっちり存在してることを忘れてはならない。

余談。物語を運ぶ要・パンのこと。
パンはギリシャ神話に出てくるヤギの化身といわれている。
ヤギの目は独特で、カエルの目と同じく「横一文字」、
どこを見ているのか分からない視線をもっている。
ヤギもカエルも人間には見えない“何か”を見ているようで、
私には特別な動物として映る。
私自身「ヤギ」と呼ばれることが多いので、
パンには妙な共通点を見出さずにはいられない。
しかも映画のパンは下半身が枯れ枝のようで、
これも私の「木を敬う」想いと一致する。
パンをはじめとする化身たちのデザインも好き。
手のひらに目玉のあるアイツは特に好き。
アナログとCGのバランスも絶妙~!

えーと、痛いシーンや拷問場面は観ていませぬ、
3~4ヶ所はパーフェクトに目を反らしてた。
観られへんのよ、想像すると痛くて痛くて…。

傑作だ! とかいいつつ満点じゃないのは、
やっぱりねぇ、ハッピーエンドがどこかで観たかったのねぇ、私。
敬愛すべき映画なのに、ごめんねぇ、監督!
でも久々にパンフレット買ったので許してくだされ。
絵本みたいで素敵やわぁ。それから!
ヒロインの少女が「アキバ系萌え」だったのもポイント高し!
衣装とか、息切れの具合とか、ジャパニメーションしてまっせ~!

孤立に勝る不幸はない。
常々思っていることを、今一度 思いたい。
『パンズ・ラビリンス』で最も孤立していた人物を、
私は腹の底から哀れんでいる。


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