『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』 2003 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『風菊の股旅者』



「若さ」ゆえ~苦しみ~♪
「若さ」ゆえ~悩み~♪
『君に会いたい』というGS時代の歌詞。
歌詞を深読みしてみると・・・
では、傷付いたり苦しんだりするうちは
年齢に関係なく「若い」ということか?
傷付かない人なんているのかな?

昨年、100歳を超える人間国宝さまにお会いしたけど、
あの御方も悩みを抱え、
苦しまれていたのが今も忘れられない。
「100になる人間の気持ちを
 分かってくれる友だちがいない。つらい」と。
当時、御方の弟は90歳代で、
10歳年下の男性を「あの子は若い」と申されていた。
確かに100歳からすれば90歳は10歳も若いが、
もう90年以上も生きていらっしゃれば、
90も100も変わらんと
それまで短絡的に思っていた私は驚いた。
しかも、100歳にして友だちが欲しいという悩みも若い、
それは10代の若者とまるっきり同じレベルで
まったくもって「若い」ではないか。
もしかしたら、悩みや痛みを抱える人は
ずっと「若い」のかもしれない。それに、
自分はまだ未熟だという想いがあって、
もっともっと目指したいものがあるうちが華であり・・・
そう、だから きっと私もかなり「若い」。
まぁ、華盛りですわ。

とある今年の夏の、暑い暑い7月のこと、
『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』という
スーパーで ドキュメントな短編映画を観た。
60歳を過ぎた男性がヒーローだったけど、
いや~ヒーローは「若い」! 華を感じた~。
間違いなく「若者」、そして童だった!
素敵なことだ、年を重ねても童心を忘れない、
これこそ人を幸せにするパワーやよねぇ、
と得心したのであった。

童心って「若さ」とは また別のもので、
いわゆる幼さとも全然違うし、
純粋で自由で茶目っ気があって、憎めなくて。
そうして「ゆめ」を信じられる力があるってことだ。
絵描きにしてもそう
童心を失っちゃ~いけない。ゆめがない世界に
感動や共感は生まれないもの。

スーパーにドキュメントな
“前衛仙術”を操るヒーローを観ながら、
私は幼かった頃の私を思い出してた。
空を飛べると信じてタンスの上から飛び下り、
「飛ぶ練習」をしたこと。
自分は魔法が使えるんだと
ハタキを手に呪文を唱えたこと。
「雨よ~あがれっ! 虹よ~出ろっ」と
梅雨空に向かって叫んだこと。

『スーパードキュメンタリー 前衛仙術』で大活躍する
「若い」ヒーローにクスクス笑いながら
大事なことを実感した。
まだまだ「若い」私の中にも確実に童がいる。
なんせ西新宿の高層ビル街に
神秘風景を映す絵描きなんだから。



★★★★☆☆☆ 7点満点で4点
前衛仙術をもってすれば自然は美しく自身に同調する。
アケビはポンポン踊るし、鳩も立派に成長し巣立つ、
ぐーんと年下の嫁さんだってやってくる。
空だって飛べるんだいっ!

「上手く作る」、「プロらしく見せる」、
時に大人はこういうことに捕われ過ぎてしまうけれど、
「もっと楽しんでみよう!」というシンプルさ、これが愉快。
巧さや技術を前面に出して
観衆の心を掴む類とは別個の世界。

金井勝監督自身が演じられるヒーローが
自転車にやっと乗れるようになった少年に見えて、
可愛いらしいな、と思いつつ、
花や鳥の奇跡的に美しい変化を映像でとらえられるなんて
すごいぞー前衛仙術! と拍手。

併映として、昨年観た樋渡カントクの『愛の矢車菊』。
樋渡カントクは金井監督が先生なんだとか。
いいなぁ、師と呼べる方がいらして。私には師匠がいないから
うらやましいかぎり。しかも前衛仙術家だし!
子弟の間柄のせいか、おふたりの映像世界は
自然という観点で似てるなと思った。
似てるということは、違いもあるわけで、
金井監督は“超天然”、樋渡カントクは“超現実”??

2度目の『愛の矢車菊』もおもしろかった。
といっても筋もオチも分かっているから人物の表情に関心がいく。
“気”が通じ合っている者同士でなければ、
切り取れないであろう顔の変化。初観のときは、
台詞に意識が傾いたけれど、再観のときは
画に流れるている空気を感じてた。
あと、画のどこかにタイトルの「菊」が現れるのかしら、
と探したりして。
↑トップ画像の『風菊の股旅者』は
なんとな~く『愛の矢車菊』という題名に
時代劇を想像してしまうので…。うん、でも、
樋渡カントクの時代劇っておもしろそー。

~2007.7.16 イメージフォーラム~
『あにはからんや00年代ドキュメンタリー傑作選』にて


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★『愛の矢車菊』を観た私の感想