Hello Horizon |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


New Horizon


『ニュー・ホライズン』。
中学1年の春のこと、
生まれて初めて手にした英語の教科書は
こんな名前。ホライゾン。 ニュー。
新しい線? って、どんな線?
よく分からないけど、でも、
英語の授業によっては、もしかしたら、
外国の人たちと あんなことや そんなこと、
それに こんなことまでも話せるようになって、
もしかしたら もしかして、あたしにも、
外国人の友だちなんか出来たりして・・・
OH! NO! ハロー! イングリッシュ!
アイラービュー エーゴ!
すごい。英語はニューな水平線・・・
ドキドキドキドキ⋯
英語の教科書を握りしめ、12歳の私は、
ついに これから新しい生活が始まると、
確かな希望に燃えておりました。なので、
Horizon という言葉をきくと私は 、
とっても前向きで、前途洋々とした気分になる。

『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006』で観た
『Hello Horizon』という短編映画は
まさしく英語の教科書と同じの、
希望にもえた青春ロードムービー。
ヒロインは“ガッツ大阪人”でありながらも
悩み多き女の子。彼女は あっさりと
オヤジ発言を口にする。

「地平線ってどんな線?
 上から見て写真に撮りたいねん」

書いた線ちゃうっちゅうねん!
関西人なら100パーセントの確立で
ツッコミを入れるだろう台詞に、
彼女のカレはこう嘆く。

「赤道も赤い線やと思ってるんちゃう?」

なんたるベタ。ふたりの旅は、
こんな掛け合いが きっかけで始まる。
これが なかなか ええよ~
私にも覚えがあるもの。

「なんか、地平線が見たいわぁ」
「え、ほんまかいな。ほな、いこか。」
「うん、いこ。」
「いこ!」

20代の始めのこと
そう言ってふたりで夜通し車を走らせた。
あまりにも簡単に旅は始まる、
「ホライズンな思い出」が私にもあるのだ。

「そやけどな‥‥
 ほんまの地平線って日本にはないらしい」
「え。ほんまか! ほな、どうしよう」
「なんか、北海道で ちょっと見られるらしいで」
「ほんまか! いこ! 北海道!」
「よっしゃ、北海道は でっかいどう!」

ブーーーーーーン。

黄色い軽自動車は走る走る。エアコンなし。
うだる暑さの中、ぶんぶん走る。

で、

到着したのは日本海だった。

「やっぱ、北海道は遠いなぁ」
「北海道は でっかいどー!」
「水平線でええか」
「ええわ、似たようなもんや、
 どっちも線や」
「そうや、地球の果てや」

果ては ちゃうやろ!!!!
と、ツッコミはしなかったが、
私らは車のシートに けだるく背中を預け、
遠くで張り詰めている青い線を見た。

「なぁちょっと。はよ、彼氏つくろな」
「ほんまや。なんで あんたと海なんか」
「まぁ、これもええやろ」
「まっ ええか」

限りなく水平線は遠く、それでも
いつの日か、あの線を越えたいと
モコモコと沸き上がる入道雲に想ったものだ。

そうして 今。
あの日に想った線を今の自分が越えたかどうか、
いくつもの夏を重ねたというのに、
その答えは まだ宇宙の遥か彼方を漂う。

『Hello Horaizon』は
“過ぎた日”を想い出させるシャボンに似た一編。
本作を観た多くの青い感性は
どこか遠くにある知らない土地を
あてもなく歩きたくなるはず。

私も未だに新しい線を常に模索中。



★★★★☆☆☆ 7点満点で4点
カラッとした南国の太陽のようなヒロイン。
でも彼女はヒミツを抱えていて、
交際中のカレにはそれを話せない。
もどかしい自分、ウェットな未来図⋯
物語自体は、ちょっと影を帯びていて、
しかも、ただならぬ旅の侵入者も表れたりして、
けっこう波風が立つ。そのわりに観賞後はポップで
アッケラカンとした印象が残るのは、
『Hello Horaizon』という
英語のタイトルのせいだ、とするのは
かなり乱暴だと思いつつ、ここに書いてしまおう。
私なら『地平線って どんな線?』にするのにな。
こんな戯言、近ごろのカタカナ全盛の映画タイトルに
とにかく飽き飽きしているせい。でも
そんな私の名前は5*SEASON・・・どう、これ!

クライマックス・シーンが想像できるだけに、
伏線をどう描くか、特に後半がポイント。
もう少し独創的なものが欲しかったな~。

登場人物は彼女と彼、通りすがりの旅人。
短いロードムービーは三人の掛け合いで進むが、
もうひとり、オジサンが ちょっとだけ絡む。
一夜の宿を提供してくれる“いい人”で、
もうちょっとオジサンで遊べたかも⋯、
なんて思うのは関西人の悲しいサガかしらん。

風船を売って旅をするオニーサン役の俳優さんに、
mixiが縁で繋がった。そのダンサーで俳優のJUNさん、
ハマリ役でしたねー。それにJUNさん以外の
彼女と彼もいい、気張ることなくラフな演技で、
ナイスキャスティングだと思う。







●『Hello Horaizon』サイト
●『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006』サイト
●『Hello Horizon』に出演されていたJUNさんのブログ
●日本海まで軽自動車で一緒に走ったナオミのこと