『現代好色伝 テロルの季節』を観た。
平淡で静かなピンク映画だったから、
たいくつに映る人もいるだろうけれど、
私は惹かれるものがあった。
それは、ピンク映画界のアヴァンギャルド・
若松孝二監督作品ということ、
主演の好色男・吉澤健がハマリ役だったこと、あと、
全共闘活動家と二人の女との情事という対比、
これらが毒っぽくて、面白いと思った。
【あらすじ】1969年作品。全共闘活動家の男が二人の恋人との同棲生活を謳歌することで、公安警察の監視を欺く。性と政治を織り交ぜた小水一男脚本の独特のブラックユーモアによって、あまりに特異な政治的ピンク映画が完成した。 初DVD化(ニューテレシネ・デジタルマスター)『現代好色伝/テロルの季節』DVD内容説明より抜粋
2人の女と同棲生活を謳歌って、
つまりは男1と女2の3人で
情事を明けても暮れても繰り返すという
エロチックというか、淫らな行いを意味する。
3Pね、3P!!!!
きっと、男にとっては飾り物の正義も、
ふたりの女を同時に抱くことも
まったく同等の背徳行動なんだなぁ~。
男は下の世話まで女に委ね、
寝間ではふたりの女に身体を拭いてもらい、
昼間はゴロゴロゴロゴロ寝っ転がるか、
テレビを見るか、散歩をするか。
そうして女たちは そんな男を共に愛している、ようだ。
この映画は69年の佐藤首相の訪米阻止闘争に合わせ、
絶妙のタイミングで公開されたと、
新文芸坐のチラシに書かれていて、
実際に映画を観たところ納得した。
この映画制作の意図は大政批判と
ヒトの本能の対比。これはアングラ系アートだ。
私はというと、
性に溺れて暮らす男を汚れてるとか、変態だとか、
堕落してるなどとは、まったく思わなかったし、
むしろ、共感しているところがあった・・・
などと書いたら、全女性を敵に回すだろうか、
男は女をヒトではなく雌でもなく、
生活のための道具として扱っているというのに。
けれど私には男がひどく純粋で、
汚れのない理想を貫いているように思えてならない。
たぶん絵描きだ、アートだ、美意識だと
好き勝手に言い放っている私こそ、
3Pよりも全然、背徳の人、
えらそうに美意識を語ったところで
睦言と同じことなんだろう、これが。
エロ場面がぜんぜんエロくない。
モノクロがぜんぜん美しくない。
女優の演技が まったくド素人。
気に入らないことは多々あれど、
異色な場面が続々、淡々とおもしろい。
1969年公開当時は異彩を放っていたであろうが、
今観ると平凡に映ってしまう。
アヴァンギャルド・ピンクの悲しいサガかしらん。
モノクロ作品なのに、
日の丸と星条旗がひるがえる場面のみカラーになって、
3人の情事が重なるのは この映画の主題だからだ思う。
~池袋・新文芸坐にて観賞~
◆ブ ル ー ボ ト ル 展 開 催 中
7/17(Mon) まで 東京・代官山アートラッシュにて
TEL 03-3370-6786 ●詳しいお知らせはこちら
紀伊國屋書店 DVD『若松孝二 初期傑作選 DVD-BOX 3』~テロルの季節選~