ナラタージュ |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

追想

narratage


結婚相手には一番好きな人じゃなく、
二番目に好きな人がいい、
こんな話をよくきくが、
『ナラタージュ』はそんな一冊。けど、
この話には二番目の人どころか、
三番バッターも登場するし、もしかしたら、
四番目の主砲が最後の最後に現れたのかも⋯、
そんな予兆を残す、ハッキリしない女のお話。
ハッキリいうと、ハッキリしない女性は、
一生ハッキリしないものだ、といって物語は終わる。

この本は、西宮在住の文学帝王・ワッシー殿が
珍しく恋愛小説を買ったというので、
目下ベストセラー爆進中の『東京タワー』と共に、
読み回しをお願いして手元に届いた。
私としても久しぶりの恋愛小説、
それも20才の女子と高校教師(たしか30代前半)の、
魂を揺さぶる一生一度の恋ときたから、
どんなもんかと けっこう期待したのですが、
いたってノーマルな初恋回顧で
平凡な読みごたえでした。残念。

そもそも一番好きだという先生の
いったいどこが好きなのか? ヤツの魅力が
きれい さっぱり伝わってこないばかりか、
二番目の男との恋のはじまりの方が、
「うっそー、そんな大胆な!」
と他人事ながら軽くショックを受けつつ、
恋愛ウィルスに感染した結果、
頭が花畑になっていくヒロインに共感できるのだ。
恋愛は熱病だから。

なので、一番好きな先生については、
やれ月がどうのこうの、
やれ雲の形がどうだ電車がどうのと、
状況描写は美しいけど長すぎて、
いったいヤツはカッコイイのか、どんな声なのか、
映画好きなのはいいが感動しとるのか、
いつ観ておるのか、まったく分からんのだわ、
しかも嫁はんとはグチグチした関係がつづいてるし、
全部テメーが悪い、ハッキリせい!
あちこちに問題をバラ蒔いてるだけやー!
教室でチュ-とか、するなーっ!

よしんば、こんな男にヨロヨロッと
何かの間違いで惚れたとしても、
(だいたい恋愛って勘違いから始まるものだけど)
第一印象で大勘違いさせるだけの、
世紀の一目惚れ場面をビビッと用意してくれないと。
『ナラタージュ』の雨の出会いは
なんだか暗いだけで、ジメジメジメジメ
病んだふたりの出会いにしても、
もうちょっと光を~~~~っ。

あと、芝居の公演、ドイツ旅行、友だちの自殺など、
これって絶対に必要な要素だったのか。
なんか位置付けが軽くて、宙に浮いてる。

いろいろ否定的に書いてるけど、
わたしったら最後の最後、ジワッと泣いてしまった、
自分がどんなに思われていたか
それを知って涙するヒロイン、わかるわかる、
忘れられない人っているもんねぇ。
けど、ヒロインが好きな先生は典型的なバカもの、
ヒロインもアホタレ、よって、
この物語の続編はこうだ、
結局ヒロインは婚約破棄、結婚もせず、
20才の恋にとらわれるあまり、
先生の友人たちと次から次へと付き合って、
“あの頃”を生涯 ナラタージュ・・・。

ナラタージュ。『映画などで、
ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法』
             大辞泉(小学館)より

ちなみに本書のカバーは、
写真家の豊浦さんの作品。元気でっかー?



●豊浦正明


島本 理生
ナラタージュ