寝ずの番 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

エロアサガオ
So, Please "so**"......


木村佳乃さんが、よかった。
かわいらしかったし、こういうと変だけど、
なんだかシアワセそうだった、
“アノ場面”を どう見せて、
どう盛り上げるかで、この映画が
受け入れられるか、拒否られるか、
大事な山場、いや、濡れ場? ともかく、
そこの場面が いい。

映画『寝ずの番』の初日、
笑った、見とれた、吹き出した、
ありがとう、原作の中島らもさんも
草葉の陰で ほくそ笑んでいらっしゃるのでは?
この映画は人情に皮肉をたっぷり まぶした、
さすがさすがの“マキノ節”。血統の良さがチラリ☆
これは近頃流行りの『せかちゅー』とは真逆の作風、
純愛涙路線に飽き飽きしている方はぜひ!

“あの場面”とは予告なんかを観た人は、
だいたい想像つくと思うけど こう。
上方落語界の重鎮・笑満亭橋鶴—が今まさに、臨終のときを迎えた。弟子たちが見守る中、一番弟子の橋次が言った。「師匠、何か心残りはありませんか?最期に、これはやっておきたかったということはありませんか?」橋鶴の口がモゴモゴと動いた。

「そ、そ○が見たい…」


この冒頭の騒動はほんの序の口、
後に始まる通夜で交わされる芸の数々は
そら可笑しくて、クッと笑えて。
腹を抱えてヒーヒー笑う上方漫才のそれではなく、
落語をのんびりきいているうちに、
ついつい もれてしまう、そういう後引く笑い。
つまり上方落語の匂いは乏しくて、
江戸落語の世界。実際の映画の舞台は上方だけど、
監督をはじめとする演者たちに
上方のコテコテ感がまるでないのだ、しかたない、
マチャアキなんて 頭の先からつま先まで
まるっきりの東京人やし、でも そのことで
大勢に受け入れられる空気が出来たと思う。
「変な関西弁」も許してしまお。

俳優の津川雅彦さん改め、
マキノ雅彦さん。初監督、かぁ。
ちょっと重なるな、
故・伊丹十三監督が初めて監督された映画
『お葬式』を観た後の感慨と『寝ずの番』。
2本共に葬式が舞台だというだけでなく
作品を通じて現代社会を風刺し、批判しながらも、
あっけらかんとしてる、いわば
恋以上の愛を求める中年向け。最近、
このテの邦画の新作が無かったから、こりゃ嬉しい。
景気が上向き予想になると、
社会派が台頭してくる⋯?

別の感慨。

マキノ雅彦監督の伯父上にあたられる、
マキノ雅弘監督の『次郎長三国志シリーズ』を
先月に何本か 観たばかりなので
あの時に味わった余韻が込み上げて来た。
同じ顔がある、長門裕之さん、富司純子さん、
そして津川雅彦さん、
良き時代の、活動映画の匂いがする。
それに歌。通夜であろうが落ち込んでいようが、
盛り上がれば歌を歌う。

♪おいらが死んだらなァ~
道端 埋めとくれ~♪


『次郎長三国志』でも合唱していた同じ唄を
映画の後半で唄っていたけど、それは
マキノ節に敬意を表してのことだろうか、
その場面で なぜか、目頭がウルッとなって
日本は いい国だ、人情がある、なんて思ったり。


映画が始まって、まず最初に、
『製作 企画・鈴木光』と馴染みある名前が
バーンと画面に現れ、「おっ」と思う。
この映画は5*がお世話になっているギャラリー
「アートラッシュ」の親会社、
光和インターナショナルによる作品。
マキノ雅彦監督は この映画の宣伝のため、
精力的にテレビやラジオに出演されていたときく。
私も某ラジオ番組で監督の宣伝ぶりを耳にしたところ、
「映画を作らせてくれた鈴木光さんに感謝したい」と、
公開前のメッセージとして、
まず製作者の名前を挙げられた。そこに、
この映画の長けている点が全て集約されていると思う。
光和ならではの1本。


★★★★★☆☆ 7点満点で5点
大きな館で観るべき作品です。
ドッカーンというコメディ大作ではないけれど、
映画でしか表現できない 際どさとエロ。
下ネタ満載なのに、上質芸を観た感慨有り。

長門裕之さんの死人役が傑作。
しかし、長門さん⋯
『次郎長~』のときの石松役から
ずいぶん経ちました。いや、哀しんでいるんじゃなく、
“枯れ”をショーにできる俳優って
いい職業だなぁと。



●『寝ずの番』公式サイト
●映画製作会社「光和インターナショナル」
●5*の作品がある「アートラッシュ」