クラッシュ |  ◆ R I N G O * H A N

 ◆ R I N G O * H A N

歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

願い

wish


つい先日、イライラする人は苦手だ、
そんな つぶやきを書いたところで、
昨日、『クラッシュ』という映画を観てみたら、
なんと、出るわ出るわ。
イライラ人ばかりゾロゾロ。
が、この映画については素直に
「傑作」のハンを押してみたい。
ぜひ、多くの人、特に社会人に観てほしい。

『クラッシュ』は
昨年のオスカー勝者『ミリオンダラー・ベイビー』の
脚本を担当したポール・ハギスが
原案・脚本・監督を手がけていて、
まず、その脚力の素晴らしさ、力量がすごい。
きっと人間が好きでなければ、
ここまでの群像劇は書けないだろう。
なぜなら、人嫌いならば
「救い」を書くことを嫌うはずだから。
映画は差別や偏見、不条理、絶望を描いているのに、
観終わった後には ほんのりと
胸のあたりが あたたかくなる。そもそも、
この映画に出てくるのは私の嫌いなイライラ人ばかり。
けど、ヤツらは ちゃんと「いい部分」も持っていて⋯。
セクハラ野郎が実は親思いだったり、
ギャングが実は慈悲深かったり。
けど、その逆の救いようのない親も出てくるから、
愕然としてしまうけど、これは現実。
日本でも同じことが起こっている、
受け入れないと。

物語は白人中心のロスアンゼルスに、
しいたげられながらも つつましく生きる人々が、
散々と別々に描いていく。やがて、
オムニバスだった各々の人間もようが だんだんに重なり、
あるクラッシュ(衝突事故)をさかいに
一本に繋がったときは拍手をしていた、心の中で。
うーん、刺激の多い映画!

映画に登場するイライラ人のイライラの原因は
やはりストレス。
多民族が暮らすことによる偏見と被害妄想。
黒人差別、9.11からくるイスラム蔑視、
新たにやってくるアジア人の苦悩。
それってアメリカの問題だし、だなんて、
日本人は他人事のように
涼しく思っていてはいけない。

肉体労働の不足を補うため、
外国人をあてにしているという事実、
いつしかそれが差別やストレスに繋がる、
これを否定することが誰にできるだろう。もともと、
日本にも民族や性別による差別はあったし、
今もなお、ないと断言できるはずもない。
ただ、ロスアンゼルスのイライラは
恐怖と背中合わせ、日本より深刻だ。
自由に銃を持つことが認められた社会、
これが一番のストレスではないか。

差別や偏見を追い出すには時間がかかる。
個人が個人への思いやりを積み重ねるしかない、
焦ってイライラは禁物、せめて100年後には
銃の数が減少傾向にありますよう、
小さな好転を諦めずに見守ろう。
時に、心と心がクラッシュするのも
けして無駄ではないのだ。


★★★★★★☆ 7点満点で6点
暗い場面が多く、画面がやや単調だったかも。
特に夜の場面では、もう少しアングルに凝るとか、
映像で魅せる部分もほしかった。ただし、
劇的に作ってある後半のクライマックスは別!
最高潮は何ケ所かに分かれていて、
どの場面でも監督の意図にまんまとハマり
ほろり とさせられてしまった。
都会的なクールさを持ち合わせているのに、
演技人の熱演が光っている。
『ホテル・ルワンダ』のドン・チードルも良いけど、
『ホテル・ルワンダ』のポール役のイメージが、
どうしても拭えなかった。おそらく、
映画の前に『ホテル・ルワンダ』の予告編を観たせい。

なお本作の主役はロスアンゼルスという都市。


●『クラッシュ』公式サイト