ジョージ・マイケル ~素顔の告白~ |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

Vol.1

ジョージ・マイケルのセカンドアルバム
『LISTEN WITHOUT PREJUDICE Vol.1』より
真似し らくがき


1980年代。
もっとも音楽が世の中にあふれ、
もっともテレビから音楽が流れ、
ニッポンで欧米発の音楽が売れまくり、
そしてウォークマンが生まれた この時代、
「ワム!」という男性ふたり組が
一躍スターダムにかけのぼった。
時代の象徴だった「ワム!」。
「ワム!」は たった4年しか活動せず、
まさに絶頂期に解散したけれど、時代が変わり
ウォークマンがお店から消えた今でも、
クリスマスといえば「まずコレ」な名曲
『ラスト・クリスマス』や
哀愁ただよう『ケアレス・ウィスパー』を
この世に送りだしたデュオ(懐かしい言い方)
ということで「ワム!」の名を知っている人は多いはず。

「ワム!」は日本でいうアイドル歌手のように
絶大な人気をはくしたし、実際、
彼らの音楽はポップで親しみやすく、
日本ではアイドルとしてプロモーションされたけれど、
けしてアイドルのような“お人形”にはとどまらない、
ソウルでアーティスト的な深さを
なんとなーく感じていた人が多いように思う。
私も そのひとり。

先日のイッピ。その「ワム!」の片割れの、
ジョージ・マイケルの半生を写した
ドキュメント映画『素顔の告白』を観てきた。
1980年代の UKチャートにドップリ浸かり、
ヒットナンバーに思い出がギュッとある身には、
当時のたまらない映像が嬉しくて、
静かな作品なのに、そこそこ楽しめ、
じーっくりと“'80年代”を考えさせてくれた。
唯一、ジョ-ジ・マイケルの相方だったアンドリュー、
彼のフケ方には おずおずしたけれど
見るうちに、ズリッと後退した額が、
なんだかセンスのいい年の取り方に思えてきたから、
きっと彼の人生はそうなんだと思う。
では、一方のジョージ・マイケルは⋯?

私も素顔の告白すると、熱烈ではないにしろ、
ジョージ・マイケルの音楽が好きだった。
“だった”という過去形なのは、
彼がソロになって3枚目のアルバム『OLDER』を聴いて、
あまりの陰鬱さに後ずさりしてしまい、
それ以来、ジョージ・マイケルの音は
私にとって「好き“だった”もの」となってしまった。
けれど、お別れする節目となったアルバム『OLDER』の、
ひとつ前のアルバム(上↑のイラスト)、
『LISTEN WITHOUT PREJUDICE Vol.1』、
これが私にとってはジョージ・マイケルの最高傑作で、
このアルバムを何度も何度も繰り返し聴いては、
彼のアーティストとしての資質に恍惚としたり、
艶と張りがある歌唱力に圧倒されたり、
民族的な孤高世界にまどろんだりしたものだ。
ちなみに、この記事を書いているたった今も、
『LISTEN WITHOUT PREJUDICE Vol.1』を聴きながら。

が、このアルバム、ファンの評価は辛口で、
商品としても あまり売れなかった。
どうやら実験的過ぎたらしく、
『LISTEN WITHOUT PREJUDICE Vol.1』は 、
その前作にして世界レベルで記録的に売れまくり、
各賞を総なめにした『FAITH』の余波で売れたにすぎない、
そう判断するメディアも多く、
以降、ジョージ・マイケルは契約元のソニーと対立、
スターとしての活動は一気に失速し、
アルバム発売は長い間、停止とてなってしまう。
その反面、彼のスキャンダルは、
それはそれは賑やかなものになった。
ソニーとの争いが法廷へと移ったこと、
同性愛者であること、そして、
公衆トイレでの猥褻行為に対する現行犯逮捕、
米英国への政治批判、など、など。

映画『~素顔の告白~』では
その各々のスキャンダルについても、
赤裸々にハッキリ語られていて、
たぶん、それらをおもしろいと言ってしまうなんて
まったく適切でないことは百も承知で言ってしまうと、
失態から逃げない天才の姿勢は
心打たれるところが多く、おもしろい。
ただ、ジョージ・マイケルがゲイであることは
彼のスキャンダルが報道されるより前に、
私は第6感で気が付いていたので、
やはりそうか、と復習するに過ぎず。
たぶん、「ワム!」の頃から、
彼の影を帯びた声になんとなく、
そのニュアンスを受けていた。
というか、私というヒトは昔から、
ユニセックスな人が創る世界に、
どうしても惹かれる傾向のようだ。
音楽しかり、絵画しかり、小説しかり。

ジョージ・マイケルは私とひとつ違いの、
同世代の人。だから、かな。
『~素顔の告白』で、
自己の半生を語るジョージ・マイケルの、
「脱皮後」のような清々しさに
強烈に共感したのは。
「ようやく吹っ切れる」って、
いくつになっても「あり」なんやね。

ところで映画によると、
9年ぶりにアルバムが発売されていたとか!
長らく私のアンテナから
ジョージ・マイケルは消えていたけれど
『PATIENCE』、買ってみようかな。
新しいジョージ・マイケルの側面が良さげだ。
それにしても、それにしても。
PATIENCE=忍耐かぁ、「彼らしい」と苦笑の後に
自分の姿を重ねて ほくそ笑んでしまう。
そう、とかく影のある音を好むのは
私自身が忍耐の人・地道な人だからで、
ジョージ・マイケルの才能も忍耐をもって、
開花する。つまり、誠実な人。
ジャズとエスニックとロック。
異種を見事に調和ができるのは
光と影を知っているからこそ‥‥。


★★★★☆☆☆ 7点満点で4点
ドキュメントが好きで、
'80年代に音楽を聴きまくった同世代の人や、
ジョージ・ファンの人はもちろん必見。
貴重なライブ映像がよろしいです。
「ワム!」時代の日本のプロデュースが
ブラックネタになっていて、
アイドル視する日本企業を一笑します。これは
当時の「ワム!」が感じていたジレンマの集約でしょうね。
なんせ、邦題『ウキウキ・メイク・ミー・アップ』だし。
なんで、ウキウキ⋯。


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