タッチ・オブ・スパイス-2 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

口、あんぐり。
『タッチ・オブ・スパイス』の名場面。
ファニスの少年期は ときどき、
面差しがリチャード・ギアに似ていて、
中年の彼は雰囲気が鳥越俊太郎さん、
つまり、やっぱりオバドル決定。


昔むかし、常識ある大人が、
あたしに こんなことを言った。
「口が上手い男には気を付けなさい」。
子どもだった あたしが おもむろに頷ずくと
その人は こう続けた。
「でも、口の上手い男は女を幸せにする」。

口の上手さで人を幸せにする男 かぁ。
言葉を巧みに使ったり、演出したり、
法螺を吹いたり、ってことはウソ上手。
考えてみたら映画監督って
ストレートに そのタイプではなかろうか。
ウソが上手なほど商売上手、
監督さんは ゆめや笑いや冒険や
時として恐怖をえがいて、
あたしらに幸福を届けてくれる。
そこで肝心要なのは何かというと、
どんなウソをつくかというよりも
どうウソをつくか、ウソの付き方で勝負する。
おそらく監督や俳優が興じるウソは
客観的で冷静である方が「ウソ上手」なはず。

先日観た映画、『タッチ・オブ・スパイス』は、
監督の経験がベースになっていて、けれど
事実を順序よく並べたという作風ではなく、
そこには演出という名のウソがある。
このウソが肝心要、ウソをウソだと気付かせずに、
どうウソをつくか、
ここが商売上手かどうかの鍵になるわけで、
映画では監督の少年時代の遠き日々を
『前菜』と『メインディッシュ』、
そして中年の“今”を『デザート』という
三部構成の芝居立てで こしらえてあり、それは、
かなり上級者が創ったウソの世界。
ただ、あたしがダメ出しをしてしまうのは、
最後の『デザート』で、それは監督の
比較的最近の思い出がベースになっているらしく、
まだまだウソが生々しいのだ。
監督自身の想いが、かなり強いのだろう、
「こうしたい」「こうしたかった」という
思い入れが全面に出てしまい、
客観性が乏しかったのが残念で。おそらく、
よほど想いを残していたのだろう、初恋の君に。

反対に『デザート』に至るまでの、
少年期の『前菜』と『メインディッシュ』が
素晴らしい味付けで、ウソの加減も絶妙だった。
お皿いっぱいに盛られたお料理は、
どれも繊細にして優しい味付け、その料理を
ただ観ているだけのあたしも軽快な気分になった。
なんといっても、笑わないことで有名な あたしが、
気がつけば目尻をさげて フフッと
笑みを浮かべていたほどで、ファニス少年はもちろん、
その両親も親戚もウソが素晴らしく上手だった。
もっと誉めると、画面の構成や絵づくりが美しく、
アラビアの絵本をめくっている気分。
そこには たくさんの料理が登場し、
これがまた、どれもこれもが美味しそう、
うまく撮れてるなぁとヨダレが落ちそうになった。
だからこそ、最後の最後で
激甘のデザートが出てきたのを悔やんでしまう、
胸がもたれた あたしは、
コーヒーも咽を通らない有り様、
これでは料理コース全体が台無しではないか。

とはいえ、映画の舞台となっているトルコのお料理は
デザートの味付けが とんでもない、
あっさりした甘味に慣れている日本人など、
一口食べたら腰を抜かしてしまうほど甘いのだから。
ということは、映画の『デザート』も
現地の人にとっては極上の味、
適当な甘さだったのかもしれない。
現にあたしが見た映画館でも
ハンカチを出して泣いてる人、けっこういたし。

実際の話をすると、あたしがトルコを訪れたとき、
現地で食べたデザートには 驚きっぱなし。
口に入れたとたん、そのあまりの過激な甘さに
歯が びっくりして浮きあがったかと思うほどで、
思わず頬を両手で押さえ、しゃがみ込んでしまった。
それこそ、ウソの上塗りのような甘さで、
今となって ようやく確信できる。
あのときトルコのデザートを食した あたしの歯は
1ミリから3ミリは飛び上がり、
“口中ベリーダンス”をしていたに違いない。
と、さらにウソを過剰に付け足しておこう。

以上、口が上手いというより口が悪いあたしの、
感想を書きつつウソをつく、というチャレンジであった。
さらに、いまだに「口のうまい男に注意しろ」などと、
けして他人を諭せない「常識のない大人」である。
★★★★★☆☆ 7点満点で5点
料理の映画ではなく、故郷を想う物語風の映画。
いい言葉、良きウンチクがたくさん出てきます。
ウソ臭いCGのコンスタンティノーブルの街並が、
何故だかとってもいい感じ、この嘘つきめ!

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相方・でことよー! のコーナー
でことよのオススメ『パッチギ』、
今日で新宿の公開が終わってしもて残念やったけど、
そうか『韓国フェス』か。
うーむ、そろそろヒョン物を
ひとつは見ておかんとツッコミがゆるくていかんな。

●ハチドリみたいに激しくツッコミを入れる
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