タッチ・オブ・スパイス-その1 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

モスク(礼拝所)から聞こえるアザーン(叫び)が
祈りの時間を知らせる。
イスラムの日常が、朗々とした声が、
ここは特別な街、イスタンブール、貴方は
もう一度 訪れるだろうと告げるのだ。


ファニスはイスタンブールを
35年ぶりに訪れた。ボスフォラス海峡の海岸に立ち、
ファニスは何故‥…と自問した。
何故、こんなにも長い年月が必要だったのか、
フライト時間はたったの50分、
その短さときたら“空弁”はおろか、
プッチンプリンだってプリン☆としただけで、
食べ切らないのに飛行機は到着、
アテネ=イスタンブールなんて、
大阪=東京間に等しい距離、
そんなにも近い土地なのに、
いったい何故 今まで‥‥ フニニニニ‥‥
ファニスの口から溜息と笑い声が同時に洩れ、
それらが“キャット空中三回転”したせいで、
とんでもなく奇異な声が辺りに響き、
ようやく ハッと我にかえったファニスは
自問に自答することができた。
「なんてこった!
 ガキの頃に惚れた女が忘れられないなんて!
 なんてファニーなんだ、オレってヤツは♪」
ファニーなファニス(←シャレのつもり)の頬を
この街 独特のスパイシーな海風が優しく撫で、
やがてサバサンドを売るポンポン船の向こうに
スーッと消えた。辺りは静寂に包まれた朝だった。
「サイメ、どこにいるんだ、会いたい…」

ファニスが40歳を過ぎた今まで
ずっと独身だったのは、サイメのせいだ、
幼い頃、ほのかに恋心を抱いたサイメの面影を
どうしてもファニスは
過去に追いやることが出来なかった。
幼少の頃に起った“キプロスの争い”が火種となって、
ファニスは異国ギリシャへと渡ったのだが、
心は ずっと、サイメのいる
イスタンブールに残したままだった。

そして、ようやくファニスは、
帰ってきた、イスタンブールへ。
大好きな トルコにいる おじいちゃんを見舞う
表向きの理由はそうだったが、実は
腹の底にはサイメに会えるかもしれないという
ゆるゆるの魂胆を隠しもっていた。
ファニスの口から、またしてもフニニニニ‥‥と
奇異な声が出そうになった、そこで、

「サイメーーー!」
と海に向かって恋しい人の名前を叫んでみた、
感動の場面! ハンカチの用意! と、その時、
清楚で小柄な日本人女性が突如として現れ、
ガシガシッとファニスの肩を叩いてこう言った。
「あんた、
 鳥越俊太郎に似てるなぁ」
関西訛りの日本語であったが、
ファニスは大学講師で親日家、女の話は分かった、
だが、トリゴエという人物は何者なのか分からない、
キョトンとしているファニスに向かって
女は まくしたてて こう言った。
「あんたな~日本に来たらええわ。
 絶対にオバドルとして、
 ごっつ人気でるって、あっ! あたし?
 “こぶ”って呼んでぇな、
 さぁ、昔の女の子のことは忘れて、
 ニッポンへ来なはれ~」

   ◆

あれから1年がすぎた。
ギリシャ映画界を飛び出したファニスは、
ニッポンに長期滞在することになり、
テレビドラマ『黄昏のイスタンブール』に主演、
アジアのオバドル(オバハンのアイドル)として、
爆発的人気を獲得、俳優としても、
大成功をおさめたのであった。
そうして、その一切をマネージメントした あたしは、
オバドル金脈名人として不動の地位を築き、
一生 左団扇で遊んで暮らすこととなったのだ。
ファニスとサイメは二度と会うことはなかった。
めでたしめでたし。
                   <完>

**********************
実際、『タッチ・オブ・スパイス』の後半の、
主人公ファニスがイスタンブールを訪れるところは、
韓国ドラマみたいで、あたしは苦手。
『ニュ-・シネマ・パラダイス』の
長いバージョンにそっくりで、まったくいただけません。
多くの人がここで泣いてたけど(あたしも泣いてたけど)
もうちょっとサラッと描いた方が、よかったな。

でことよ、この映画を観に行ったとき、
キミがホの字の「ヒョン坊」が主演の
チラシを見つけて持って帰ってきたんやけど、
よーく見たら、PG12指定になってる!
エロイのか? それとも痛いのか? 『清風明月』!

●チョ・ジェヒョンが好きなでこのブログ