映画の冒頭に主人公・グセムの情事。
その後、彼女のヌードが あらわになる。
オッパイ離れてるし、垂れてるし。けど、
これが主題だと あたしゃ見た。
いわゆる既製品から外れた精一杯の生きざま。
同じくオカマみたいなグセムの母も、娼婦の隣人も
まったく一筋縄でいかない女たち。
アルジェリアの映画。首都はアルジェ。
と、整然と書き出しておりますが、
アルジェリアという国のことを、今まであたしは、
まったくカヤの外に置いていたし、てんで無関心だった。
地理的にいうとアルジェリアの位置は
アフリカ大陸の一番北の端っこ、
隣国にはモロッコやチュニジアがある、というと、
なんとなくイメージできるでしょうか。
そういえば確か、ナイジェリアという国も、
アフリカ大陸の内陸部にありましたねぇ、
小学校の頃、「おまえの脳みそ ナイジェリア～♪」とか
「今日は宿題アルジェリア～♪」とかなんとか、
アホな歌を歌った記憶が‥‥。
コホン* ともかく、あたしゃ『ビバ！ アルジェリア』は、
アルジェリアについての知識を、
まったく持たないままに観たわけですが、
フランスの影響を強く受けていることが、
きっちり映像から見てとれる。
街の角という角から匂いたつ、古き良きパリの懐かしい面影、
物語はフランス語で物憂げに展開していく。
しかし初めて見た街・アルジェは
しっかり都会で、しっかりヨーロッパ。
事実、映画観賞後に調べて分かったことで、
他の近隣諸国同様アルジェリアもフランスの植民地だったとか。
だから本作の監督さんも、アルジェリア人ではあるけれど、
フランス生まれの フランス育ちいうことで、
アルジェリア映画というよりフランス映画という趣きで、
映像には なんともいえないノアール（黒）な世界が、
えんえんと立ちこめてる。けれど、
荒削りとも情熱的ともいえる強さがあって、それは
ブラジルやキューバといった南米のカラーとも一致する。
というのも近年のアルジェリア国内には、
イスラム過激派によるテロの危険が蔓延していて、
不安定な内政が街のカラーに影響していることも
しっかり映画から伝わってきた。
映画に登場する三人の女性は
はっきりしない男と不倫中の 27歳のグセム、
元・酒場のダンサーのグセムの母(なんか、男にも見える)、
そして、娼婦に身を やつし、流されて生きるフィフィ。
三人の女性が安いホテルに偶然 身を寄せ、
行き先が見えない未来に戸惑いながらも、
自分自身を見直していく、というストーリーで、
時代は2003年ということだったが、
2年前の時代背景にしては、ひどく懐かしい空気‥‥、
アルジェの様子は、なんだか ふた昔前の日本、
バブルに突入する以前の'80年代と だぶって仕方ない。
なかでもファッション、とりわけ洋服の色がケバイ、
女性のメイクも派手派手だし。でも、あたしは、
洗練とは程遠く、ちょっと垢抜けない彼女たちが
人間臭くて好きだ。人との関わり方も体当たり的で、
駆け引きがなくて、恐ろしいくらい真っ直ぐで、
みんながみんな、なんの衒いもなく「鬱気」を打ち明ける。
今の日本は「鬱気」を言ったら恥、みたいな、
暗さは微塵も無いように蓋をして見ないふりをする。
まったく、淋しい社会だ、つくづくニッポンは。
相方の でこが昨日の記事で激怒してたけど、
携帯が手放せない輩が多いのも そこらあたりが原因では。
ちなみにアルジェリアでの携帯電話の普及率は、
まだまだ庶民には浸透していない、って感じ。
といっても、映画の2003年からもう2年、
今は どうなってるかは分からんけど。
アルジェリアは、でも、
女性にとっては生きにくい社会だと思う、
やはり宗教が社会にも精神にも大きく関わってくるわけで。
ただ映画を観た限り、アルジェリアでは
男女の恋愛は自由にできるみたいだし、
女性は常にスカーフを頭に巻く風習はないようだし、
同性愛者も ちゃんと生きてるし、
ガチガチのイスラム社会ってことはなさそうだ、
少なくとも首都アルジェは。
『アラブ映画祭』の最終日に観た三本の中で、
あたしが もっとも共感出来たのは、この映画。
あくまでも共感ということで、
それは「好き」という嗜好とは また違って、
この映画の中で一番好きなものは何かというと、
ヒロインではなく、元ダンサーのゴッツイお母さん。
都会暮らしを嫌っていた中年の女性が、
女として、人として、しなやかさを取り戻していく、
その変化の部分に、とんでもなく憧れる。
映画の後半、将来ダンサーになりたいという幼い少女が、
元ダンサーのお母さんに こう たずねる。
「踊ることは罪なの？」
すると お母さん。
「犯しましょ、罪を」。
く～～～っ かぁ～っこいい！
★★★★★☆☆ 7点満点で5点
アルジェリアかぁ、行ってみたいな。
しかし、テロの危険が今も続いていて、
しばらく遠い国のままになりそう、かなり残念。
●一応 携帯電話は持っているけど、
使っているのかどうか、はなはだ疑問な相方・でこのブログ