スパイ・バウンド |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

黄色い花畑の追跡劇。何の花だろう、
菜の花かキリン草かそれとも‥‥判別できないうちに、
スピーディーに駆け抜けた圧巻の序盤。~お見事!
セリフを一切なくすことで緊張感が増した。


『007シリーズ』が南に位置する映画だとすれば、
こちらヴァンヴァン+モニカ主演の『スパイ・バウンド』は、
北に位置するスパイ映画。だから、
まったく娯楽作品ではない、
でも あたしはめっちゃくちゃ楽しんだ。

秘密裏に活動し、緊張の連続の中で生きるスパイ。
裏社会に潜むべく、感情を捨てて生きてきた人間が、
情へと傾いたなら、そこに待ち受けるものは…。
ともかく、スパイの実体を忠実に表現しようと試み、
それを堂々と最後まで貫いた映画なので、
たとえば「モニカのオッパイ・ポロリ」や
派手なアクション・シーンや、
悪人 VS 善人を期待して出かけると、
冒頭の逃走劇で簡単に脱落、後は客席で寝るしかなくなる。
(モニカのオッパイ・ポロリは あるにはある)
あくまで映像表現が軸になった映画で、
強い印象の場面が次々に現れ、引き込まれると目が離せない。
この監督さんの映画を あたしが観たのは この作品が初めてで、
どういう経歴の人なのか よく分からないけど、
たぶん、コマーシャルとか
ミュージックVなんかを作っていた人のような気がする。
というのは、人間だけでなく、
「車」「自転車」「洋服」などの、
「商品」の見せ方が抜群に うまいから。
後半の見せ場になっているカーチェイスのシーンなんかは、
特に素晴らしく、目が釘付けに。
なんというか、迫力ある映像というより
「車の特質を見抜いたアピール」のようなものを感じるが、
このあたりは「ファッションの街・パリのセンス」なのかも。

映画の舞台はモロッコをはじめ、
ヨーロッパ各地に またがっているというのに、
いわゆる「観光案内」のような目玉風景はない。
なのに、ほんのりと各々の
お国柄が伝わってくる“さり気なさ”が そこにはあり、
それを「おくゆかしくて良い」と捉えるか、
「予算がないせいで、素っ気ない」と捉えるか、
観る側の感性がどちらに傾くかで、
この映画を楽しめるか、退屈になるかの分かれ目になる。

映画の終末では、雪山が畝る。
そのゾクゾクする美しい光景の中、
逃走するものが小さく見え、そして
見えなくなる。
しばらく‥‥‥そして、
終わり。エンドロール。

ぇえーーっ? もう終わりっ?
と、あたしも ちょっと驚いたけど、
流れていくエンドロールを静かに見てるうちに、
そっかぁ、この結末でいいんだ、これしかないと納得。
善悪、丁半、オトシマエをハッキリつけなくちゃイヤ~ン、
そういう明白さを求めてしまうと、
「チキショー! 金返せ-!」になるはず。
実際、あたしが観た日も、レディースデーだというのに、
やたらと やさぐれたオッサンが目立って、
映画が終ると同時に 競馬に負けたかのように、
苦々しい感じで帰った人が何人も いたし。
だいたい、この映画を「モニカ・ベルッチ主演」だなんて、
変なセールスしたのが大間違い、どちらかというと、
ヴァンヴァンの方がメインに活躍するし、
クレジットにしたって 旦那が先。だから、
「オッパイ・ポロリ風映画」を期待して裏切られ、
クチャクチャの顔をして帰ったオッサンたちが火種になり、
「最低の映画!」という噂が口コミで広がったら困るなぁ。
でも考えてみたら、フランス映画が苦手だという人も
おなじ同じ道を辿ることになるんだし、
この映画の日本での評価は冴えないものになるだろう。
あ~あ、いっそ、こうセールスにすればよかったのに。
「真摯にスパイの苦悩と活動を描いたフランス映画!
 ○流映画に馴染めない方、飽きた方、いらっしゃ~い」

ヴァンヴァンとモニカ夫妻の演技はいうまでもなく、
さすがに息ピッタリ。ただモニカの方が、
あまりの美しさゆえか、
ちょっと力み過ぎたようにも感じたけれど、
この映画が モニカの大きな転機になるような気はした。
ゴールデン夫婦の、それぞれの演技については、
また後日ダラダラ書くもんね~~。

★★★★★☆☆ 7点満点で5点
男と女、ふたりのスパイ。それぞれの生い立ちとか、
家族のことが もう少し語られてもいいように思った。
あと、エンドロールのフランス語のラップは、
ちょっと浮いてるみたいに あたしは思ったけど、
監督を含む制作スタッフがラップ世代なんだろうなぁ。

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でこよ、たぶんチミは、この映画は
ちょっと物足りないと思うじゃろう。
でも、カメレオン俳優ヴァンヴァンが本領発揮してるねんで、
変装やら、関所破りやら「それは ないっ!」という、
ツッコミを入れるポイントは ぎょうさん あるで~。
それから、洗い過ぎて縮んだモヘヤの心臓を持つチミ、
チミの意見を読んで、あたしは『アレックス』を一生観なくてよい、
そんな気がしてきたわー。

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