ストレンジアンティーク 1
「テン・・・今日はティンブラティーで頼むよ」
「はい。かしこまりました。」
綺麗な女性が私のために紅茶をいれてくれている。当たり前の光景なのに当たり前じゃない風景。
「テン・・・今日は、お客さん、来ないな。」
「はい。普段どおり誰もいらっしゃいません。どうぞ・・・。」
無表情な彼女は紅茶をテーブルに差し出した。熱くなく冷たくもなくちょうどいい温度。
「今日も・・・だったな。」
彼女はなにも答えない。ここでは笑いもしないし、怒ることもない。普段の彼女はどんな表情をしているのだろう。明るい顔なのかもしれないし、普段から暗い顔なのかもしれない。ただ、彼女は誰からみても’綺麗’の一言だろう。
「そういえば、服はできたかな?」
「すいません。もう少しで完成なのですが、’紐’の扱いが難しくて。今週中にはできる予定です。]
彼女は申し訳なさそうな顔もしないで謝った。彼女は本気で謝っているのだと感じた。そう思うことにした。
「そんなに急がなくても大丈夫。今すぐ必要にはならないからね。必要になる時は面倒が起こるからな。面倒はごめんだ・・・。」
からんからん。入り口のドアが開いた。
「すみません。ここってバイト募集してませんか?」
面倒がきたか・・・。
正直、この店に来るお客はなにか面倒をかかえてやってくる。ここは、面倒処理屋ではないのだ。
「すいません。今バイトは・・・。」
「はい。大丈夫ですよ。お名前は?」彼女が制した。こうなったらもう止められない。
彼女は女の子にめっぽう弱い。彼女からしたらぬいぐるみを買う気分なんだろうか・・・・。
「まったく・・・。俺はちょっと出かけてくる。あとはテンにまかせる。」
女の子の顔をちらっと見てドアに手をかける。明るそうな女の子だ。
「はい。いってらっしゃいませ。」
彼女はテーブルを片付け女の子を座らせてていた。
からんからん。店をでる。
「暑いな~。」
思わず出てしまった。ここ最近急に暑くなったな。
「タバコでも買いにいくか。」
日影を探しながらぐたぐた歩く。こんなことなら出てこなければ良かったなと後悔する。
タバコの自動販売機が蜃気楼のように立っている。お前も大変だなぁと思いつつ。硬貨を入れる。
「ルシファー・・・」
不意に後ろから声がした。
「誰だ、その名前は面倒が起きるから嫌いなんだが・・・。」
気だるそうに振り返る。暑いのにスーツ姿にジュラルミンケース。
「なにか用か?」
間を空けずに。
「吐息が盗まれた。」
「面倒だな・・・。」