ドクター
「重粒子線治療できますよ
でもね、最初にも言ったように、
僕は事実を伝えるから。
ちょっとこのデータ見て」
と、先生が今までの症例や
医学会で発表した資料など
見せて頂き、
妻と症例が近い人の
ビフォーアフターを
複数人、見せてくれました。
(同じ上顎洞ガンで扁平上皮に
癌が出来ている人など)
ドクター
「この人は、奥さんよりもまだ腫瘍は小さいね。
で、やはり女性だったので、
顔を手術したときの不安感。
例えば、
自分が見た目に耐えれない。
外を出歩けなくなる。
義眼になる。
周りの目が気になって生活できないかも。
など
それよりも、顔は残したい!
という希望だったので、
重粒子線治療を選択されたの。
で、術後の口の中はこんな感じ。
わかるかな?」
妻と私
「。。。
これ、上顎(うわあご)に穴が
開いているんですか?」
ドクター
「そう。
上顎(うわあご)だけじゃないよ。
鼻中隔って言う鼻を仕切っているところも
完全に空洞になる。
つまりこの腫瘍がある部分が
ぜんぶ放射線で溶けてなくなるってこと。
次の画像はこれ。
これは1年後かな?」
妻と私
「え?同じ人ですよね?
上顎だけじゃなく、まるごと?
歯も歯茎もまるまる半分
無くなってるってことですか?」
ドクター
「そう。
こんな風に徐々に、周りの骨や肉が
腐って溶けていく。
もちろん、腫瘍ギリギリ狙って
放射線はあててるんだけど、
その周りも被爆する。
例えは悪いけど、
原爆しってるよね?
あれを体の中に落とすイメージ。
怖がらせたくないけど、
ごまかしたくもないからね。」
妻と私
「これ、こうやって徐々に
口の中が崩れていくって、
痛くないんですか?」
ドクター
「痛いに決まってるよね。
生きながら、体の一部が死んでいくから。
当然、普通の痛み止めでは無理だから、
麻薬レベルの強い痛み止めが
常に必要になる。
痛いだけではなく、
口の中から鼻の中、半分ないから、
ご飯も食べにくい。
例えば、
米粒が勝手に鼻の奥にいったり
してしまうので、少量ずつ、
気を付けて食べなくてはいけない。
また声も出しにくくなる。
上顎が無いから話しにくいし、
鼻の中が無いから、
極度の鼻づまりの人が
話しているように聞こえる。
だから話をしたくなくなる。」
妻と私
「これかなりつらくないですか?」
ドクター
「つらいよね。
だから、隠さず見てもらってるの。
決めるのは自分だからね。」
妻と私
「それはそうですよね。
間違いない。」
ドクター
「で、奥さんの場合は、それだけじゃなく、
目の下の骨がほとんどないから、
こんな感じになる可能性もある。」
妻と私
「目の位置がおかしいですね。
凹んでいるってことですか?」
ドクター
「そう。眼球を支える骨が今でも
ほとんどない。かなり薄い。
で、そこに腫瘍もあるから、
重粒子線はあてることになる。
すると骨もなくなるから、
眼球を支えられなくなる。
すると、目は見えるけど、
眼球がこうやって落ち込んでいく。
普通なら、ここにネットとか入れて
支えを造れるけれど、
重粒子線をやった周りの骨は
もろすぎるので、こんな治療ができない。
こうなるのには、数年かな。」
妻と私
「これ、重粒子線した後の方が、
どんどんつらくなっていく。
ってことですよね?」
ドクター
「そうだね。
だから、治療としては、
重粒子線治療は可能。
ただ、
僕が奥さんの立場だったら、
手術を選ぶ。
だって、こうやって徐々に
被爆が広がっていくからね。
手術で顔は半分切り取って、
形成しても、見た目はよくない。
目も義眼にしなくちゃいけない。
子供とかは指さして、お化け~とか
言われるかもしれない。
子供は純粋だから、
残酷な時もあるからね。
でも、手術ならその後、ドンドン
良くなっていく。
周りの目を気にせず
生きていけるなら。
僕なら手術を選ぶ。」
妻と私
「こんな治療法だってこと、
ほかのドクターは知らないんですか?」
ふと疑問に思って聞いてしまった。
ドクター
「知らないんだろうね~
簡単に放射線あてたら小さくなる~
くらいに思っている人も多いよ。
これだけ予後が悪くなる。
って説明したとしても、
治療後に数年たってから、
『先生、数年前に重粒子線治療を
うけた患者さん、酷くなってきて。。。
どうすれば良いですか?』
って連絡くるときもあるからね。
もちろん、小さい腫瘍であれば、
そんな酷くなることもないんだけど。
でも、想像しているのとは
全然違うよね。」
妻と私
「なるほど。。。
だから医療センターの先生も
『とりあえず小さくなると思う。』
って言ってたのか。」