〝難しい……〟 | 好文舎日乗

好文舎日乗

本と学び、そして人をこよなく愛する好文舎主人が「心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつ」けた徒然日録。

指定校推薦でA大学を受けるB君が志望理由書を持ってやって来た。指定校推薦は不合格にはならない。しかし、志望理由書はあまりにひどい。

「これに多少手を加えて出す? 指定校だから落ちっこないけど、これを読まされた教授たちは『なめとんのか!』と激怒するだろうね」

「一から書き直したいと思います。」

「じゃあ、大学案内やホームページを見たりして学部・学科についてもっと調べておいで、それからだね。マップの作り方、知ってる?」

「マインドマップを作ってみたんですけど、うまくできなくて」

「おお、綺麗だね。でもスカスカだ(笑)志望理由書にはマインドマップよりシンプルマップの方がいいだろう。松宮さんの本を買って勉強してごらん」

「はい。わかりました」

「また来てください」

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B君と入れ替わりにC君がやって来たので、「さっきまでB君がいたよ」というと、仲の良い友人であるはずのC君の顔色が変わった。

「困った奴ですね、あいつは……。先生の所には来るなってあれほど言ったのに……」

「えっ?」

「先生、すみません。Bのことは放っといてください。あいつは指定校で、落っこちることはないんですから、何も先生の手を煩わせる必要はないんですよ。D先生でいいんですから……」

D先生とはここ数日話題になっている某女性教師のことである。

「先生に見てほしいと思っている生徒は大勢います。合格が初めから保証されている奴は、先生の負担を軽減するために他の先生の所へ行くべきなんですよ」

C君の気遣いは嬉しかったけれど、何とも複雑な思いであった。

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またまた難しい問題である。C君の言うことも一理ある。でも、B君にも〝よい志望理由書〟を書きたいという思いがある。だから僕の所へ来たのであろう。D先生では無理と判断したのである。だとしたら、B君の気持ちにも応えてやりたい。しかし、それではかなりの時間を奪われてしまう(B君は「一から書き直」すと言ったが、「ゼロから」の間違いである)。これは難しい。