「とにかく書いてみればいいから…」 | 好文舎日乗

好文舎日乗

本と学び、そして人をこよなく愛する好文舎主人が「心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつ」けた徒然日録。

昨秋のこと。高3生のA君が小論文を見てほしいとやって来た。


「何か書いたものはあるの?」

「今まで一度も書いたことがないので、書き方から教えて欲しいいんですが…」


それではと、ホワイトボードを使い、小論文と作文の違いから始めて、「携帯電話」を例に「書き方」を説明した。


A君が呟いた、「もっと早く先生の所に来ればよかったです」と。


「今までどうしてたの?」
「一ヶ月前から国語の先生に小論文の書き方を尋ねて回ってたんですが…」
「一月も前から始めて1本も書けてないの?」
「書いて持っといでって言われるんですけど、書き方が全然わからなくて。小論文の本は読んだのですが…」
「どう書いてよいのかわからないって、先生にきちんと話したの?」
「はい、そしたら、とにかく書いてくればいいからって…。」


あきれてしまった。初めて教習車に乗る者に「とにかく走ってごらん」と言って困惑させる自動車学校の教官のようなものだ。


数学の先生に質問に行ったら、隣で解き方を説明してくれる。

英語の先生でもそうだろう。でも、国語の先生でそんな姿にお目にかかることは滅多にないと言ってよい。解答のコピーを渡し、「頑張ってね!」と声をかけるだけ。情けない話だ。


その後、A君は本番までの3週間、土日・祝日を返上して、実によく書いた。その結果、志望校に見事合格した。