IFRSに関する誤解 その2では金融庁が公表する11の全般的事項のうち最初の2つについて説明しましたが、今回は可能な限り、「一気に」突っ走りたいと思います。
「誤解3 全面的なITシステムの見直しが必要か」という点
→これに対する回答は、既存のシステムの全面的な見直しは必ずしも必要ではない。という回答となっています。
一般的な読者からすると非常にあいまいで分かりにくいのではないでしょうか?
個人的には全面的なシステム変更を行う必要はないと思いますが、これも会社の経営目標及びIFRSのインパクトによるものと考えられます。
たとえば、海外進出を視野に入れている、すでに海外に進出しており顧客や取引先等からIFRSに関する情報提供が求められている等の事情がある場合、海外に親会社(もしくはその他の関係会社)があるケースで、IFRSを基準として情報開示が求められている場合には、外部公表の情報のみならず、グループ内部の資料についてもIFRSをベースとした情報が必要となってくるケースがあると思います。
その場合は、全面的ではないにしてもシステムのかなりの変更が必要かと思います。
また、IFRSの影響度が非常に大きい会社では、日常業務からIFRSを視野に入れておかなければ、開示情報の作成ができないということも考えられます。
その場合もかなりの部分をITに依存することになりますので、システムの変更が必要になるケースがあります。
おそらく多くの会社ではシステムの見直しは一部もしくはエクセル対応で済む話になろうかと思います。
「誤解4 社内の人材のみではIFRSに対応できないのではないか」
→これに対する回答は、プリンシプルベースだからといってコンサルタントなどの外部専門家に依頼しなければならないということはない。研修や自習、社内検討等を通じて社内の体制を整備することでも相応の対応が可能と考えられる、としています。
ここはまさにおっしゃる通りです。
ただ、ここで想定される対応を自社で行う場合と外部のリソースを勉強会開催等にて一部用いる場合との費用対効果の比較考量が必要です。自社で行う場合の「落とし穴」はやはり、独自にすすめて、ふたを開けてみると全く方向性が間違っていたという状況です。
自社のリソースで対応する場合はこのようなリスクもあるので、十分な留意が必要です。
「誤解5 監査人の対応が厳しくなるのではないか」
→これに対する回答は、IFRSになったからと言って監査人の対応が厳しくなるわけではない。
IFRSに対する十分な体制を整備し、会計処理の考え方等を自ら説明することが重要。としている。
こちらもおっしゃる通りです。
IFRSは原則主義であることから、「どのような考え方でこのような会計処理を行ったか」ということを会社自身が説明できないといけません。
仮に説明が不十分であれば監査人の立場からは、原則に基づいた判断をせざるを得ないこととなるため、結果的に厳しい対応ととられてしまうかも知れません。
このようなことがないように、IFRSの対応を行うさなかにおいて、監査人との定期的な打ち合わせが必要と考えられます。
「誤解6 英語版IFRSを参照する必要があるのか」→これは特にコメントはありません
「誤解7 財務諸表は英語でも作成する必要があるのか」
→これに対応する回答はIFRSになっても、我が国企業の財務諸表は、英語で作成する必要はないとしています。
これも前述したとおり、会社の経営目標に関連します。英語での作成が必要ないのは確かですが、以下の内容は検討する必要があります。
仮に会社が海外展開を今から行おうとする場合、英語版のIFRSベースの財務諸表を作成できることは、取引のドアオープンツールとして使えるため、英語での財務諸表作成も今後の会社の経営目標に照らして、考えることが必要です。
「誤解8」→これも飛ばします。 決して手を抜いているわけではないですが、特にコメントがないので・・・。
「誤解9 監査は大手監査法人でないとできない」
→国際的な提携をしている大手監査法人でなければ監査ができないということはないとの回答です。
→ここは私が書くと営業のようになってしまうので、コメントを差し控えたいところですが、大手の強みとしては、さまざまな事例を元に判断できること、海外Firmとの提携関係があるため、そこからのノウハウ吸収ができること等が考えられます。
「誤解10 これまでとは全く異なる内部統制を新たに整備しなければならないのか」
→これに対しては、内部統制を全面的にみなおす必要はないとしています。
全面的な見直しは不要と私も考えますが、J-SOXのように今まで行っていることを文書化するというものではなく、今まで行っていなかった業務を行う部分もIFRS対応の過程でどうしても必要となります。
IFRSの影響度合いにもよりますが、影響度合いが小さく、IFRSとの差異を埋める作業を決算の過程で行える場合は、決算財務報告プロセスのみが変わります。
しかし、影響度合いが大きく、差異を埋める作業を日常業務から見直して対応する場合は、業務処理統制まで影響します。
そのため、全面的な見直しは必要ありませんが、影響度合いによっては相当程度の内部統制の見直しが必要となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
「誤解11 業務管理や内部管理の資料もIFRSとなるのか」
→これに対しては、強制されてはいないとの回答です。
ここは経営者の判断にゆだねられています。
決算のみならず、内部資料でも業績の進捗状況をIFRSをベースに見たいという場合は、内部資料もIFRSベースとなりえますし、海外にIFRS対応をしている親会社その他の関係会社が存在する場合は、内部資料もIFRSで作成することを求められる可能性があります。
(総括)
忘れてはいけないのはIFRSはいわばあらたな会計基準です。ただ利用の仕方によっては企業の武器ともなりえるものであるため、IFRSに振り回されることなく、対応を行う必要があります。
※本ブログでの意見はあくまで私見であります。