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3倍早くなるためのDTP講座

DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。

つづきのつづきのつづきです。

※CC使用期限切れにより検証できません(メイン環境でないのでうっかりしていました)。間違いありましたら遠慮なくツッコミをお願いします。

●画像の埋め込み解除

CCから搭載された「画像の埋め込み解除」は「埋め込みを解除してリンクにする」という機能ですが、これは埋め込み済みのファイルを抽出して別ファイルとして保存し、そこにリンクをかける機能です。元々リンクしていたファイルにリンクをかけ直してくれているわけではありません。


ただ、Illustratorでは、ある意味埋め込みファイルを抽出してリンクをかけた方が絶対的に安全なので、仕様としては正しいのかもしれません。名称から勘違いする人がいるかもしれないので一応注意喚起を。

抽出した画像ファイルは、埋め込みの項で言及した解像度変更のため、書き出したデータは同じ画素数でも、サイズやカラーモードなどが変わってしまっていることがあります。

ちなみにInDesignは元データへのリンクも、抽出してリンクもどちらもできます。埋め込みから元データへの再リンクする際に、画像ファイルが変更されていれば警告も出ます(100点満点)。

ああ、そういえば神速IllustratorのP285に、条件付きで埋め込みを元データにリンクをかけ直すテクニックが載っていたなぁ(棒)。

●パッケージ

私CC使ってないのでIllustratorのこれは詳しいことワカリマセンが、リンクファイルを収集してくれるInDesignやQXではおなじみの機能です。

これIllustratorにしてはちゃんと作ってあって(すごい失礼!)、初回で問題にした同名別ファイルを処理できるのです。

たとえば下図のようにいろいろなところからリンクをかけていて、名前がバッティングしているファイルがあったとします。

↑ちゃんと管理しないとこういうことも起こりうる。現実問題ほぼないと思ってはいるけど

「リンクされたファイルとドキュメントを再リンク」(なげーよ)チェックがオンならば、収集時に同名別ファイルがあると名前に文字列を追加してそのファイルにリンクをかけ直してIllustratorファイルを上書きしてくれます。

↑重複ファイルがなくてもリンクパスは書き換えてくれるので、間違いなくLinksフォルダ内のファイルにリンクがかかる


「リンクされたファイルとドキュメントを再リンク」チェックがオフの場合は残念ながら同名ファイルがあると1個だけしか収集してれず、そのまま再リンクすると恐ろしい結果に。

ただし、全てオリジナルファイルのコピーになるので更新日などが変わらず、同名重複の恐れが無かったり、フォルダが分かれてても実は同一画像など、これはこれで使い道があるのです。

↑単純にファイルのコピー収集なので、同一環境内ではリンクは元のファイルにかかったまま。リンク切れになれば同一階層のLinksフォルダにかかる


ここはキッチリ違いを理解して正しく使いましょう。

●まとめ

というわけで、やっとまとめでございます。

DTPというか、プロフェッショナルの作業において、リンク配置を使うのであればファイル保存時のリンク状態を保持するのは絶対に必要な事です。にもかかわらず、Illustratorにはその機能が欠落しています。何より再リンクしたものが正しいのかどうかの確認ができないのが一番の問題点です。

しかしながら、入稿時やバックアップ時に同名別ファイルや補正前画像の混入などのミスは起こりえます。だってにんげんだもの。

そうしたミスが起きたとき、Illustrator側は助けてくれません。はい、最初から助けてくれないのが分かっているならば自衛手段を講じれば良いのです。

知らなければ踏むかもしれない地雷でも、ある場所がわかっていれば回避することは可能です。まず、リンクは切れやすいもの、再リンク時は確認しようがないことを念頭に置き、フォルダやファイル名に気をつけて、使える環境ならパッケージや場合によっては埋め込みや埋め込み解除なども駆使しましょう。

とういわけで、リンク周りの挙動について知る限りの内容をこちらにまとめさせていただきました。

重要なことを書き忘れていましたが、こちらの一連の記事は基本CS5での挙動です。バージョン違いによる仕様変更などはあるかもしれません。もし間違いや追加情報、お気づきの点などありましたらコメントなど頂けたら助かります。

以上で「知ってるつもりのIllustrator(リンク編)」はおしまいです。







つづきのつづきです。

●画像置換のルール

リンク画像は別の画像に置換することができます。
例えば50×70mmのリンク画像を17.5×25mmの画像に置換するとします。

↑これくらいのサイズの違いがあります。


するとベロンと置き換わります。これ、同じ倍率でも同じ寸法でもない、ピクセル等倍とかでもない、ではなんじゃらほい。



↑もーなんだよこれー。


もったいぶっても仕方ないのでズバリ、これは対角線の長さが同じになるのです。そして基準は画像のセンターです。


つまり縦横の比率さえ同じなら(再サンプル無しのリサイズなど)、置換してもIllustrator上でのサイズや位置は一切変わらないということです。

デジカメ画像などは取りあえず貼っておいて、カラーモードや色味、解像度を調整してから張り直してもトリミングしない限りズレません。

でもそんな仕様だからノートリからトリミングへの置換はもう大変なんですよ、奥さん! アタリ画像をノートリで貼って、トリミングを入稿する人ちょっと来なさい。メッ!(さすがに今はいないか^^)



●埋め込みのルール

リンクを扱うなら埋め込みにも言及しないといけませんね。

埋め込みは配置データをIllustratorファイル内に格納する機能ですが、単純に格納しているわけではありません。データによってはオリジナルデータと異なる情報に書き換えてしまいます。

まずはカラーモード。リンクファイルととIllustratorファイルのカラーモードが違う場合、ファイルを埋め込むとそのモードに変換されます。



次に画像解像度とサイズ。ラスターデータの場合、画素数は変わりませんが元の画像解像度に関係なく72dpiに変換されます。

この際Illustrator上での貼り込みサイズは変わりませんが、整合性を取るために必然的に拡縮率が書き換わります。前述の通り画像サイズが変わっても縦横比は変わらないので見た目は一切変わりません。

↑原寸で貼ったのに



↑埋め込んだら12%でした。この画像の解像度はいくつか求めなさい。(10点)



ちなみにこの「72dpi」はラスタライズ解像度などとは関係なく固定のようです。

たとえば350dpiの画像が72dpiになるとサイズは約5倍になるので、100%で貼っていたものが約20%に縮小されます(正確には4.86倍で20.571%)。仮に23%に縮小して配置したら、埋め込み時は4.371%になるわけです。

こんな仕様ですから、埋め込み画像とリンク画像の倍率を合わせて貼り込みするのは大変なんですよ、奥さん!

また、レイヤー付きpsdファイルは、埋め込みオプションでレイヤーを分割したり1枚画像にしたりできます。ただし調整レイヤーなどのレイヤー分割不可能なものは強制的に1枚画像になるようです。

クリッピングパスのあるものはクリッピングマスクに、レイヤー分割したときのレイヤーマスクは不透明マスクになります。

クリッピングパスは何とか目視できますが、レイヤーマスクは危険です。これ、画像を置換してもマスクが残るので、似たような画像だと見落とす危険性があります。

↑タイガー、いやレイヤーマスクが不透明マスクに。オブジェクトとして表示されないので透明パネル出てないとなかなか気付かない。

↑画像修正時にご丁寧に余白トリミングしてくれて再リンクしたらちょっと拡大されちゃって、マスクは居残るからずれちゃったの図。この現象はクリッピングマスクも同じです。


IllustratorファイルやPDFも埋め込めますが、ベクターデータはオブジェクトとして展開されることになります。ネイティブデータが埋め込まれるわけで無いので、アピアランスなどは分割された状態になります。


Illustratorデータでは、配置状態では「線」にも変形がかかりますが、展開すると線に変形はかかりません。オリジナルとは違う形状になるので注意しましょう(過去記事参照:Ai-Aiリンクの注意点(その1))。

画像ファイルは埋め込んだときに名前やリンクパスが残るものと残らないものがあります。

↑これらを手動で埋め込むと、


↑Photoshop PDFとPhotoshop EPSは名前とリンクパスがなくなる

                                                           
Photoshop PDF 消える
Photoshop EPS 消える
tiff 残る
psd 残る
jpeg 残る


●「配置画像を含む」チェックとリンクの強制埋め込み

「画像含む」にチェックするとリンクとして配置していてもリンクデータの形式によっては強制的に「埋め込み」になりリンク関係は破棄されます。

DTPの主要形式であればeps意外は全て強制埋め込みと思っておきましょう。意図していない埋め込みは前項のとおり注意が必要です。リンクを保ちたいならば「配置画像を含む」チェックは要注意です。

↑「配置した画像を含む」にチェックを入れて保存してみた。


↑Oh! これ絶望! ちなみにai形式、Illustrator eps形式共に同じ結果でした。


なぜかepsだけはIllustrator EPSでも埋め込まれません。埋め込まれた画像の名前やリンクパスは消滅します。

強制埋め込みにはオプションなどの指定はなく、Illustratorのオレルールに従って埋め込まれます。

しかもPDF互換aiとepsは既にリンクデータを内包しているのに更にデータを格納するため、データ容量がふくれあがります。

↑画像含まなくてもリンク内包するから出力できるのに…


さらにチェックがないと「本当に埋め込まなくていいのか」的な問答がありますが、印刷出力に関しては、これは「世界の半分をオマエにやろうと」同じです。埋め込まなくても出力できるのに埋め込みチェックを入れるとリンク関係が破棄され容量マシマシになります。

↑うーめこむ、うーめこむ! やめなよ、りんちゃん泣いてるでしょ! せんせー!


また、検証の結果「同一データの複数リンク」の「内包」は1枚であろうと10枚であろうとデータ容量は同じですが、埋め込んでしまうと枚数分のデータに比例して容量が増えます。

↑でPDF互換チェックありのai形式(内包状態)なら、同一画像のリンク配置1枚でも5枚でも容量は1枚分。埋め込むと5倍になる。


うっかり強制埋め込みになってしまうと、容量は増えるし元データに直しがあった場合全て再リンクになるというダブルパンチを食らうことになります。

「配置画像の埋め込み」は、リンク切れなどを気にせず配置データを固定するための便利機能ですが、使い方を誤るとトラブルの元です。

※ai形式ではPDF互換を入れずに「画像を含むチェック」だけチェックしても出力はできず、ver.8形式のepsでは「画像を含むチェック」で出力できました(昔はこれで出力してました)。正直よくわかんないっす。

これらを踏まえてリンクをリンクとして保つなら保存形式には注意しましょう。埋め込みからリンクへの復旧は面倒なうえ、貼り間違いやマスクのトラップもあり危険です。



もう1回だけつづきます。






つづきです。

●リンク先の変更と更新

リンク先のファイルを変更した場合、「リンク」なので当然Illustrator側でも変更されます。しかし、これには「条件」が付きます。

たとえば、リンク画像のあるIllustratorファイルをInDesignに貼り込んだとします。InDesignからPDFを書き出せば以下のようになります。


ここからリンク先のファイルを更新します(aiファイルは開きません)。この状態でInDesignからPDFを書き出すとどうなるでしょう。


Illustratorにリンクしているファイルが変更されているのだからそれを反映したPDFが書き出されそうですが、実際は「Illustratorを保存したとき」のデータで書き出されます。つまり、リンク先ファイルだけを修正しても変更は反映されていないということです。


察しのいい方はお気づきでしょう。そう、Illustratorがリンクファイルを「リンク」しているのは「ファイルを開いている」ときなのです。

ちなみにInDesign-InDesignリンクではリンク先のデータに変更が生じた場合警告を出します。こちらはリアルタイムで「リンク」していることがわかります。

●リンクファイルの行方

元データまでリンクファイルを読みにいかないならば、データはどこから吸い上げているの? と思いますよね。



実はリンクと言いつつ保存時にリンクファイルを複製内包していて、そのデータを出力しているのです。なにぃ、リンク画像をIllustratorファイルに一緒に保存しているだと!


と、にわかに信じがたい事実ですが、容量を見ればほらバレバレですよ。

↑白紙データは126KBで、リンク画像を配置して保存しただけのデータは9.3MB(保存オプションは同じ)。リンク元画像が14MBでちょっと計算合いませんが、プレビュー画像にしては重すぎます。…持ってますよね。

乱暴ないい方をすれば、リンク元のデータなんか無くたってちゃんと出力できるのです(でも入稿時は添付しないとダメです。リンクデータが無いと、データのチェック時にリンク切れになってしまいますから)

●保存形式による違い

リンクファイルを内包するのはPDF互換チェックのあるai形式か、Illustrator eps形式になります。両者はリンクファイル内包のルールが違います。
※「配置した画像を含む」チェックの有無と、リンクデータの内包は関連性がなさそうなので、ここでは外す前提とします。


■ai形式
ai形式のデータをInDesignなどに貼り込んで出力するためには「PDF互換チェック」が必須となります。PDF互換チェックは説明が大変なので省きますが、チェックするとリンクファイルを内包します。


つまり、ai形式出力用ファイル = PDF互換チェックをオン = リンクファイルを内包するという構図になり、必然的に内包する形になります。


(参考:公式ヘルプ引用
A-2. 「PDF 互換ファイルを作成」オプション

AI ファイルは PDF および PGF の両方の形式を使用します。「PDF 互換ファイルを作成」オプションを選択した場合、Illustrator は PDF ファイルを読み込める全てのアプリケーションと互換性のある PDF 構文が添付されているファイルを作成します。このオプションを使用する場合、Illustrator のファイル内に 2 つの形式を保存するため、ファイルサイズは増加します。


ただし、「PDF互換チェック」なしはPDFとしての情報を持たないだけで、リンク情報が消えたり、Illustratorデータが破損することはありません。


■Illustrator eps形式
こちらはPDF互換チェックはありませんが、「ver.9以降」のIllustrator eps形式ファイルは出力用のファイルを内包します。なので現在のIllustrator eps形式はリンクファイルを内包していると考えて良いでしょう。

↑同じデータからバージョンを変えて保存しました。共に「配置した画像を含む」チェックは外しています。


また、ai形式とeps形式では内包するデータの形式が違います。FileJuicerというソフトで抽出して検証してみましたが、ai形式は透明や別カラーモードのデータ(RGB←→CMYK)を内包、eps形式は透明を分割してカラーモードは統一して内包しているようでした。


●ではリンクはリンクでは無い?

それじゃあ埋め込みと変わらないじゃん。と思うかもしれませんが、埋め込みとの決定的な違いは「情報として」は外部ファイルであること。Illustratorファイルを開いた瞬間に内包データは外部データのリンクに置き換わりますので、「リンク」としての体裁を保っていることに変わりありません。


また、「リンクとして内包したもの」と「埋め込みしたもの」ではデータが異なります。例えばai形式でCMYKの書類にRGB画像をリンクした場合、リンクならRGBのまま内包、埋め込みならCMYKへ変換されます。


リンク周りは思った以上に深くてどうも藪をつついて蛇を出した感が…。
記事はかなり端折っているにも関わらず、まとめきれず。
まだつづくのです。