Illustratorでタッチのあるイラストを描く1 | 3倍早くなるためのDTP講座

3倍早くなるためのDTP講座

DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。

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(2015/06/03 一部表記を見直ししました。内容に変更はありません)

従来Illustratorでイラストを描くのは、「描く」のでなく「線を作る作業をする」ことでした。分かり易くいえば、習字に対するレタリングのようなものでしょう。手描きならさっと描ける人も、Illustratorで描くとパスの制約などで思わぬ時間を食ってしまいます。


ペンツールでパスを描くのは時間と手間がかかるうえ、美しい曲線を描くためにはベジェ曲線を扱うスキルも必要です。理想は「手描き」でさっとパス描き、ポイントの編集でパスを整え、タッチを意図通りに修正することだと思っています。


Illustratorのベジェ曲線や可変線幅は美しく編集もしやすい。そのうえアナログでは不可能な描いた線を思い通りに動かせるといった、デジタルとアナログのいいとこ取り。これ完璧でしょ。


しかしそれは机上の空論で、実際ペンタブとブラシでパスを描いてみるとアンカーポイントが多くてパスの編集は困難、平滑度を下げれば描いたものとは別物になり、さらに可変線幅は筆圧に対応しません。


しかたなくカリグラフィブラシを使うと筆圧で付けたタッチの編集は不可、問題回避すればすぐに別の壁に当たりうまくいきません。それでも鍛錬の結果、うまくペンツールや線幅ツールで描くことのできる「達人」はいるでしょうけど、その域に到達するまでの課程は生半可ではありません。


できれば万人向け、絵が描ける人なら少しのスキルアップでIllustratorでイラストを描けるようにできないか。いろいろ試した結果、有料のプラグインDynamicSketchで描き、WidthScribeで整えるというワークフローに至りました。


では、早速ご紹介しましょう。


まず絵柄をDynamicSketchというプラグインで直接描くか下絵を配置してなぞります。

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↑プラグインを入れるとツールパネルにDynamicSketchツールが現れる



筆圧感知するタブレットを使うと、筆圧を可変線幅に変換してタッチのついたパスを作成できます(他にもマウススピードなどでも可能)。ちなみにCS5以降です。

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↑タッチは線幅プロファイルとして適用される



詳細設定でaccuracy(正確性=的アイコン)とSmoothness(平滑度=アイロンアイコン)を調整できます。


accuracyを上げるとペンの動きに正確なパスが描けますが、アンカーポイントが増えます。Smoothnessを上げると線幅マーカーは減りますが、描いた線からかけ離れます。

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個人の筆圧に合わせたカーブの調整もできます。これは人によって適正値が変わると思うので試しながら調整しましょう。
驚くことに、これらは描いた後でも調整が可能です。


accuracyでアンカーポイントの量を減らせるのはとても重要なポイントです。例えば、1本の曲線が3つ以上のアンカーポイントで作成されている場合、パス上のアンカーポイントは「くさび」となるので、アンカーポイントが多くなるほど曲線の編集は困難になります。


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↑左がブラシ、右がDynamicSketch。1本の曲線のアンカーポイント量が違います。たった1つのアンカーポイントでも編集作業の手間は大きく変わります



同じ曲線ならアンカーポイント数が少ない方が後の編集作業で有利になるのはIllustrator使いなら理解できるでしょう。DynamicSketchはアンカーポイントの少ない美しい曲線を作成できる独自の技術を搭載しているようです。


さらに、InkScribeというプラグインを使うと、少ない手間で美しいパスの編集が可能になります。こちらは、余力があれば導入をオススメします(まとめて買うと安いみたい)。

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↑パス形状を保ちつつアンカーポイントを削除したり、ハンドルの種類を変更したり。パス編集が多い人にはオススメです


アンカーポイントの移動やハンドルの編集で線画を仕上げます。この時点では、はみ出したパスはそのままにしておきます。

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↑ふつうのIllustrator編集です。バランスを見ながら調整します


次に余分なパスをカットしてゆきます。イチオシ機能のTrimmingは、交差したパスのはみ出た部分を簡単にカット(繋げることも可能)できます。これによりパスがはみ出さないように注意を払う必要が無く、大ざっぱに線が引けるので時短にもなります。


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↑パスのカットはSHIFTを押しながらドラッグするだけ(又はパネルのTrimmingボタンをON)


通常はアンカーポイントを削除すると線幅プロファイルはそのまま圧縮されタッチが変わってしまいますが、DynamicSketchのカットならタッチはそのまま残ります。


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↑左は交点にアンカーを追加して上のパスを削除、右はトリミングでカットしたもの。左はタッチが圧縮されます


DynamicSketchの難点は可変線幅のマーカーが多く出来てしまうことです。特にSmoothnessを下げたものはマーカーが多すぎて、手動で線幅を調整するのはほぼムリでしょう。
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↑曲線が美しく、アンカーは少ないけど、線幅マーカーは多め。手動での編集はムリでしょう


そこで、WidthScribeを使います。WidthScribeは可変線幅のマーカーを最適化したり、タッチをスムースにする機能が付いています。


Width Brush Toolで選択したパス上をドラッグすると線幅が太ります(+SHIFTで細ります)。ただ、やりすぎると大抵ガタつきます。

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↑Width Brush Tool


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↑ドラッグで線幅を調整できます


おおまかに形が決まったらWidth Selector Toolで線幅マーカーを選択し、Width Smoothボタンをクリックすると、ガタついた曲線が滑らかになります。手動では大変な複数マーカーの削除も、選択してゴミ箱アイコンをクリックするだけです。

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↑Width Selector Tool


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↑マーカーを選択するとマーカーが濃くなります


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↑Width Smoothボタン。数回クリックするとがたつきがなくなります


また、パスを選択して、オブジェクト>パス>Optimise Width Markersを選ぶと、線幅マーカーを間引けます。マーカーを間引くわけですからストロークは多少変化します。ブレビューを見ながら最適化する数値を決定しましょう。

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↑タッチはさほど変わらずに線幅マーカーが減りました


マーカーが減ったら、手動で線幅を微調整します。

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↑これもふつうの線幅ツールの編集です。美しく仕上げましょう



単純なタッチならプリセットのプロファイルを当てるほうが手軽です。

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↑プリセットを適用できる場合は使ったほうがラクチンです


これで、アンカーポイントと線幅マーカーが少なく、パスや線幅の編集しやすいスムースな線画の完成です。

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↑私が手動でトレスするよりも曲線が滑らかでアンカーポイントが少ないと思われます


両プラグインを使用したワークフローは、手早くカットを描くのにピッタリです。慣れれば1カットを数分で描くこともできるでしょう。ただ、ファンシーグッズで使い回すくらい完璧なものを作るには、それなりの慣れと手間はかかるでしょうけど。


線幅抜きで単純に「ペンツールでカチカチトレス」を「手描きでさっと描く」に置き換えるだけでも、大幅な手間の軽減になるのではないでしょうか。


両プラグインとも14日のトライアルがあるので、興味のある方はお試しを。
〈つづく〉