浅い眠りと

深い眠りを


交互に繰り返す。




砂浜に波が打ち寄せる様に


僕の意識も


うつらうつら

ゆらゆら


行ったり来たり。




みんなの

語りあう声と

楽しそうな笑い声が


時折

聞こえてくる。




だけどそれに

耳障りな感じは全くなく


むしろ

耳に心地いい音律となって


ふわふわとして

温かく


僕の中に浸透する。




夢なのか

夢じゃないのか


その境目が

とてつもなく曖昧な感じ。




けれど


時折

僕に触れてくる

大きな手のひらの温かさ。



それによって


今のこの状態が

夢の中の

出来事なんかじゃなくて


現実なんだって事を

教えてくれる。




この手のひらが

誰のか

なんてこと僕は知っている。



いつも

僕のことを護ってくれている手。


絶対に

僕を傷つけたりしないって事も

知ってるし


分かってる。



だから尚の事


僕は

素の佐藤勝利の

身も心もさらけ出して

ここに居られる。




だって


この手のひらの持ち主は・・・・・・。






『ちゅっ。』



ぼんやりとした

おぼろげな意識の中


これまた

知っている感触が

僕の額に触れて・・・・・・



そして


直ぐに離れていった。





・・・・・・あれっ?


いつもなら

この後


ぎゅうぎゅうに抱きしめられて

その長い腕の中に

閉じ込められてしまうのに


今は

なんの動きもない。



それどころか


僕の側から

離れていく気配がした。




けれど


夢うつつの今の僕の状態では


目を開けることも

待ってと

声を発することもできなくて。



僕から

そっと離れていった

彼の気配を感じながらも



僕は

そのまま

深い眠りに落ちていった。





『・・・けん・・・とく・・・・・・ん・・・・・・。』



夢の中で
彼の名前を呼んだ。