宿について

各々

部屋に通された後



今晩は

5人で一緒に

寝ようって事で


自分たちで

眠るための準備として

布団を敷いた。



なんとなしに決まった


どこの場所で誰が眠るのか。



暗黙の了解的な感じで

俺と勝利は隣同士。


まぁ・・俺は・・・。



勝利の隣りは

絶対に勝ち取るって


決めてたけどね。




俺の隣りで


すうすうと

軽い寝息をたて眠る


俺の

かわいい子。



リラックスした状態。

心地よい空間。



となれば・・・。


無防備になってしまうのは


致し方ないことだと

分かってはいる。




薄く開いた形のいい唇。

ほんのり赤い目元と頬。


瞳を開いたら

バサっと音がしそうな程の

漆黒の長いまつげ。



そして


はだけかけた

浴衣の下からのぞく

 

あらわになった


喉仏の下にあるホクロ。

細い二の腕。


するんと引き締まった太もも。




「・・・・・。」



自然と伸びる腕。


頬の輪郭を上から下へと

ゆるゆると

撫でてやると


俺の手のひらに

無意識なんだろうけど


顔を

擦り付けてきた。




いつもなら・・・。


俺と勝利の

ふたりしかいなかったら


コトに及んでいるであろう

シチュエーション。



 

勝利から目線を外し


顔を上げて周りを見れば

ほか3人

見事に夢の中の住人。




けれど


この状況で

さすがに

この子に手は出せない。



勝利の目元を

そっと

親指のはらで撫でた後


乱れた前髪から覗いていた

額に

軽く唇を落とし


なるべく

直視しないように

手早く

浴衣の乱れを治してやった。




掛け布団を

胸元まで引き上げてやると



自分の枕元に

無造作に置かれている


べっ甲のメガネをつかんで掛け

スマホを手に取ると



俺は


そっと

部屋から抜け出した。








「・・押しとどまったじゃん?

  中島さん?」



静まり返った部屋の中


ひとつの体が

布団から起き上がった。