あの後



聡くんが

スタイリストさんを

連れてきてくれた。



あんなにも

僕の胸元のチェーンに

絡みついて


離れようとしなかった

健人くんの

袖口のボタンだったのに



「えっ?・・あっ!?

  ・・あり・・がとうございました。」


呆気ないほど

いとも簡単に

僕の胸元から離れていった。




「・・もしかしてお前らさ・・共犯?」


風磨くんが

僕と健人くんの顔を

交互に見ながら

楽しそうに聞いてくる。



「そんなわけないでしょ!!」


「・・そんなわけないでしょ?

  ふふっ・・ねぇ・・・?」



健人くんが

僕の言ったことを真似しつつ


茶化したような

返しをするから


逆に


怪しい要素感が

満載となってしまい



聞き逃してくれなかった

風磨くんに


「・・ふぅ〜〜〜〜ん・・・。」

 

って

ほらっっ!!


疑われてんじゃん!!




・・でもさ?

本当に絡まっていた・・よね?

・・う・・ん・・絡まっていたはず。


暗くて

はっきりとは

よく見えなかったし


僕も

まじまじと見て

確認したわけじゃなかったけど・・・。




健人くんの顔を見た。


瞳が優しく笑ってる。



ねぇ?

その表情はどっちなの?



「・・けん。」


名前を呼びかけて途中で止まる。




「失礼します。」


スタイリストさんが

健人くんの手入れに入った。



さっき

風磨くんと聡くんが

仕上げてもらってたように


メイク

衣装

アクセサリー


全身チェックされ始めた。




次は僕の番だね。


そう思いながら

仕上げられていく彼の姿を

ぽやーっと見ていたら



「・・勝利?」


名前を呼ばれた。

聡くんだ。



「・・ごめん。

  あ・・のさ・・見と・・れている所

  ・・申し訳な・・いんだけど・・・。」


「誰が見とれてるんだよ!!

  見とれてなんかないわ!!」



「あっ?・・そうなの?

  てっきり

  見とれてるんだとばかり・・・。」


「・・聡くん・・さ?

  段々と・・風磨くんに似てきたよね?」


「えっ?!

  そっ・・そんな事ないよ!!

  似てない似てないって!!」



慌てての全否定が

僕の中で

妙にツボってしまい

思わず笑いがこみ上げてくる。



「もう勝利・・笑いすぎ!!

  ・・でもさ・・そういう勝利はさ?

  ケンティー育ちじゃん?」


「違います。」



「えっ?・・うそっっ。

  前に自分でも言ってたじゃん!!」


「そう・・だった・・かなぁ?」



よく覚えてるね?

って思ったけど


そこはファジーにしとこ。



「で?

  聡くん・・なに?」


「うん?」



「さっき僕のこと呼んだでしょ?」


「・・・。」



「聡くん?」


「・・忘れちゃった・・てへっ♪

  思い出したら・・声かけ・・・。」





「・・あの・・・。

  お話中のところ申し訳ありません。」


聡くんとの

会話の最中に声がかかった。




ふたりして

声のした方に振り返ると


さっき


聡くんが呼んで連れてきてくれた

スタッフさんが立っていた。




「次は勝利の番だよ。」


「うわっっ!?」




いつの間に


僕の後ろに回っていたのだろう

健人くんに

耳元でささやかれる。


「俺が

  勝利の事・・かなり乱しちゃったから

  しっかり直してもらってね?」



そう言って彼は


僕のことを

そっと

後ろから抱きしめた。