「だってさ・・暗いじゃん?」


「・・まぁ・・夜だしな・・・。」




「バックハグしたままで

  歩けないわけじゃなかったけど。


  ・・でも・・もし・・・。


  もしも・・ね?

  俺がつまづいたらさ

  勝利が

  俺の下敷きになっちゃうだろ?」


「・・まぁ普通に考えれば

  そう・・なるわな・・・。」



「あとさ・・・。」


「・・・まぁ・・な・・・。」




僕と聡くんを

間に挟んで


健人くんと

風磨くんの会話が続く。




・・あのさ・・これからさ・・・。

リハするんだよね?


当事者の僕が

こんな事をいうのもなんだけど


時間

どんどん過ぎていってますけど?



生ライブ本番までの

時間は

かなりの余裕を持って

とってあるから


ここで

少しくらい時間ロスしたって

さほどの影響はない。


健人くんにしろ

風磨くんにしろ

ふたりとも仕事のプロだし


仕事に対しての

真摯な姿をいつも見てきた。


スタッフさんに

迷惑をかけている所なんて

見たことがない。



だけど


僕と聡くんの

頭の上を飛び交っている

兄組ふたりの

会話のやり取りの

終わりが見えなさすぎて


この時間を

待っていてくれている

スタッフさんに申し訳なくて




「・・ねぇ〜〜えぇ〜〜〜。

  早くこの絡まりを何とかしないと。」


僕は

ふたりの顔を

交互に見ながら声をかけた。

 


「おっ・・・。」

「・・でし・・たね?」


 

ふたりの目線が

瞬時に僕の胸元へと向けられた。