俺たちの職業に盆も正月もない。
仕事を頂いての世界。

だから
一般的にいうところの
季節のイベント
なんてものは無いに等しい。


けれど
どうしたって
誕生日とクリスマスだけは特別で

愛しい恋人がいれば 
なおさらに
その日は何とかしても
一緒にいたいと思ってしまうのは
世間一般の方と変わらない。




しかし案の定

俺と勝利のクリスマスは仕事で
しかもイブの夜
勝利の撮影は終わりじまい。

いつ終わるか分からない。
だから
レストランの予約もできない。


クリスマス・イブの1週間ほど前。

「僕さ・・・イブの夜は
  仕事だから一緒にいれないし・・。
  健人くん・・・
  お友達に誘われてるんでしょ?
  行っておいでよ・・・。」
って言われた。

「しょーり?顔上げて?
  俺の目を見て言って?」
そう言っても
勝利は俯いたままでピクリとも動かない。

小さな顔の小さな顎の下に
片手のひらを差し入れて
そっと上向かせると
両方の瞳に
今にも
あふれそうなほど涙が溜まっていて

そしてそれは
俺と目が合った瞬間にした
まばたきのせいで
ポロリポロリとこぼれ落ちた。

もう
愛しさしかない。

「何時になってもいいから
  撮影が終わったら
  終わりそうになったらでもいいよ。
  連絡して?ちゃんと待ってるから。」

そう言って
華奢な身体を抱きしめた。