気持ちが高ぶって抑えられない。

俺は
冷静な判断のできる奴だと
思っていたから
自分で自分に驚いている。


きっと
勝利だから。

勝利に関する事だから
後先なしに体が動いてしまう。

こんなにも夢中になってしまうんだろう。

                                                                      



健人くんが・・・。

僕の大好きな健人くんが
アクシデントとはいえ
僕の指先を流れる血を見て
なんの抵抗もなく自分の口へと
僕の指を運んだ。


あっ!?」
凄くびっくりして

「けっ・・・けん・・とく・・ん・・・。」
うわずった声が出た。


どうしよう・・・。
僕はおかしいのかな・・・。
嫌だと思う気持ちが起こらない。

むしろ
嬉しいって思ってしまった。

恥ずかしいけど
嬉しくて
僕の指を舐める健人くんから

・・・健人くんの唇から
目が離せないでいた。

時々覗く赤い舌。

指を舐められているだけなのに
身体が何だかむずむずしてくる。
これはなに?
僕の身体はどうしちゃったの?


中々
僕の指を解放してくれない健人くん。
嫌じゃない。
嫌じゃないんだけど
どうしたんだろうって思って
声をかけた。

そしたら
『チュポン』
って音を立てて指先から口が離れた。

「あっ・・・ん・・。」
声が出ちゃった。
恥ずかしい。

物欲しそうな声だったかな。
物足りない顔してるかな。

恥ずかしさをごまかす為に
今まで
健人くんに舐められていた指を
自分の胸に抱き込んで下を向いた。


帰ろうって言って
僕の頭を
優しくポンポンってする健人くん。
いつも通りのお兄ちゃんの健人くん。


さっきの光景が頭に浮かぶ。
僕の指をくわえる健人くんの唇。
なんでか分かんないんだけど
あの唇に触れて欲しいって思った。
今、欲しいって思った。


「・・け・・んと・・くん・・。」
上目遣いに健人くんを見る。

今の僕は
きっと物凄く
あさましい顔をしていると思った。


何だか焦っている様子が感じ取れる。
こんな事して
呆れられちゃったかな。

思ったよりも
落ち込んでいる自分がいて
凄くびっくりした。

こんな事しなければよかった。
その気持ちのまま瞳を閉じた。

ごめんなさいって言おうとして
口を開きかけたら

さっきまで感じていた
西陽の光が遮断された。





目を閉じていても分かる。
健人くんは僕を一緒に
カーテンの中に包み込んだ。







僕の望んでいたものが
僕の唇におりてきた。