ゆっくりと
健人くんの両眼が開いた。

あっ・・。僕が映ってる。
たったそれだけの事。
そんな事でさえ嬉しいと思ってしまう。


「ありがとう。愛してるよ。」
下から長い両腕が伸びてきて
大きな手のひらが
僕の両頬を包んだかと思ったら
そのまま下に引き寄せられる。

健人くんとの距離が縮まるほどに
彼の瞳に映る僕が大きくなる。

「ふふ・・・勝利どうしたの?
  いつもは直ぐに瞳閉じるのに・・。
  今は目、逸らさないのな?」
不思議そうに健人くんが問いかけてきた。

「あっっ・・・。」
健人くんの瞳の中にばかり
気を取られていたから
ふたりの鼻先が
くっつきそうな距離まで来ていた事に
全く気づかなかった。

「・・健人くんのさ?瞳にさ?
  僕が映ってるんだよ?
  何だか嬉しくて目が逸らせなかった。」
正直に答える。

「お前さ・・・。かわいすぎ・・だろ。」 
健人くんの言葉と吐息が僕の唇に触れる。

僕の両頬にあった健人くんの手のひらに
グッとチカラが入り
そのまま引き寄せられて唇が重なる。
ギュッて目を閉じた。

健人くんの手のひらが
僕の両頬から離れたと感じた

次の瞬間
体がグルンって回ったかと思ったら
上下入れ替えられたみたい。
そっと目を開けたら
健人くんの肩越しに
寝室の天井が見えた。

「け・・・んと・・・く・・・。」
最後まで名前を呼ぶ事ができなかった。

あっという間に唇を割られ
健人くんの熱い舌が
僕の口の中を舐め回す。
息もできないほどの口づけに
生理的な涙がこぼれた。