結婚式で、初めて家族席に座った。
とはいえ、兄弟が結婚したわけでもなく、従兄弟が結婚したわけでもない。友人の妹が結婚したのである。
一年前、僕の友人であるTが結婚式を挙げた。そのときに僕が撮った写真をTの母が大変気に入ってくださって、妹であるK子ちゃんの結婚式もゼヒ齋藤に撮ってもらおう、という運びになったのだ。
二つ返事で承諾したものの、会場にはTとK子ちゃんの家族以外に知っている人がいるわけではない。かと言って式場公認のカメラマンでもないので、仕方なく僕も家族席に椅子をもらって、酒を飲みながら撮ることと相成った。
K子ちゃんのことは、彼女が小学生の頃から知っている。K子ちゃんは「お兄ちゃんの友達は私の友達」という感性の持ち主で、Tの家に行ったときは、僕らの輪の中にK子ちゃんも混じって遊んでいた。
当時小学4年生の彼女を見た僕は、一目惚れした。
「Tの妹のK子ちゃん、可愛いんだよ…。」
と学校で発表したところ、ロリコン扱いを受け、それ以降中学・高校時代をロリコンのレッテルを貼られたまま過ごすという恥辱を味わった。
中学・高校の頃はともかく、大学生になっても社会人になっても、僕はK子ちゃんをデートに誘えなかった。
「だって、Tの妹だもんな…。」
僕はそう言い訳をして、デートに誘わない自分の認知的不協和を解消していた。
そうして僕が10年くらい手をこまねいている間に、 K子ちゃんは好い人と出逢い、プロポーズを受けたのであった。
式の日の天気予報は雨だったのだけれど、見事に外れてくれた。涼やかな秋晴れだった。
「齋藤くん、今日はよろしくね。」
「まかせとけ。最高に綺麗に撮ってやる。」
ウエディングドレスに包まれたK子ちゃんは、やっぱり可愛くて、僕は一心不乱にシャッターを切りまくった。胸の奥が少しだけ疼くのを誤魔化すように。
K子ちゃん、おめでとう。

