市川 春猿 改め
河合 雪之丞 かわい ゆきのじょう
新派入団 第一作 
三越劇場に行って参りました
三越劇場は日本橋三越デパート本館6階にある
便利でアットホームな劇場です
雪之丞さん
もう昔から新派にいらしたように
繊細かつ骨太の演技 
華岡青洲の妻、加恵を演じました
華岡青洲 はなおかせいしゅう とは
江戸時代後期の外科医
世界で初めて全身麻酔による手術を
成功させた偉人です
青洲の母親や 妻の加恵は
自らすすんで 麻酔の実験台となり
青洲の偉業達成に身を捧げたのです
初々しい若妻時代の加恵は
声も仕草も可愛らしく
お姑さんには 逆らえません
３年ぶりに遊学から帰宅した 青洲と
二人きりになることも許されぬほど
お姑さんは強烈です
ポツンと取り残され
夫が拾ってきた仔猫を抱くシーンは
いじらしくて 印象に残りました
年月が過ぎ
加恵も だんだんと逞しくなっていき
息子べったりな姑とのバトルにも
余裕が感じられる程です
このお話は 演じる人によっては
ねっとりとした嫁姑戦争のお芝居に
なるのかもしれませんが
雪之丞さんが演じた "華岡青洲の妻" は
泣いても 怒っても ムカついても
陰湿ではなく カラッとしているので
嫌味がなく 時にユーモラス
雪之丞さんの お芝居は
観ていて 気分が良かったです
水谷八重子さんが演じた
お姑さんも
息子が大好きなのだから仕方ないね、と
思わないでもないような
憎たらしくも愛らしいお姑さんでした
私は このポスターを見て
波乃久里子さんが
青洲の妻 を演じるのかと
勘違いしていたので 
雪之丞さんが、主役の 青洲の妻
最初から最後まで
ほぼ 出ずっぱりであることに
とても感動しました
雪之丞さんは
美しくて 勢いがあるので
少し地味な印象だった新派の世界に
パッと大輪の花が咲いたようです
同じく歌舞伎の世界から
一足先に 新派入りした
喜多村緑郎さんとの息もピッタリ
緑郎さんも
本当に素晴らしい演技でした
動物実験を重ねることによって
麻酔薬の開発は成功したものの
ある理由から
患者が望む乳ガンの手術に踏み切れず
苦悩する 医師としての厳しい表情
以前 同じ病気を患いながら
助けられなかった妹への思いが
重く のしかかります
雪之丞さんとの
コミカルな場面もあり笑いました
大好きな 久里子さん
今回は出番が少ないのかと思いましたが
後半の重要な場面での熱演は
やはり素晴らしく胸に迫りました
最後に 雪之丞さんはじめ
出演者の皆さんから
歌舞伎でいうところの 口上のような
ご挨拶がありました
緑郎さんに続いての
雪之丞さんの新派入団
そして雪之丞さんと共に
歌舞伎から新派へと活躍の場を移した
若手３人の紹介もありました
緑郎さんと共に新派入りした
喜多村一郎さんも とても素敵でした
八重子さん、久里子さんが
新しい力の集結を
心から喜んでいらっしゃるのが伝わり
最後は客席も全員で 一本締め
新春にふさわしく
明るく希望にあふれた打ち出しでした
もう一度観たくなるほど
よいお芝居
オススメです
