だいぶ出遅れましたがカメ
今年の初観劇は三越劇場です鏡餅

日本橋三越デパート本館6階にある
とても便利で居心地のよい劇場でした

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三越劇場初春新派公演
「大つごもり」
「寒菊寒牡丹」

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水谷八重子さん波乃久里子さん
歌舞伎界から市川月乃助さん
新派初参加の勝野洋さん
華やかな顔ぶれが揃いました


生涯を新派に捧げた名優 花柳章太郎さんの没後五十年追悼公演です

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樋口一葉 原作 「大つごもり」


"大つごもり" とは大みそかのことです

時は明治中頃、資産家の家の 口うるさくて吝嗇(りんしょく=ケチ)な ご新造さん(奥さま)のあや(水谷八重子さん)のもとで健気に働くみね(波乃久里子さん)が、

かじかむ手で井戸の水を汲み、重たい桶を両手に持って何度も運んでいますあせる

親を早くに亡くしたみねは、金に困り窮地に追い込まれている育ての親に、奉公先から借金してくれるよう頼まれていますが、未だご新造さんからいい返事が貰えず沈んだ顔


久里子さんは、先日テレビで このお役が大好きだと仰っていただけあって、幼さの残る少女みねを可愛らしく自然に演じていました



石之助(月乃助さん)は この家の長男なのですが、前妻の子なので疎まれて家を出て放蕩三昧、時々帰って来てはイヤな顔をされています


大つごもり、自分の留守中に大嫌いな義理の息子が帰って来たと知って身震いする継母のあや
まるでゴキブリでも踏みつけたような表情です

一方では自分が生んだ娘たちにはニコニコして「なんだい?」などと甘い声を出しています


石之助はお金をせびりに来たとはいえ、
"大つごもり" なのですから、少しは家族にいい顔してもらえるのではないかと儚い希望を持って来たかもしれません

でも、やはり継母が留守とはいえ、自分は "お呼びでない" という空気を感じ、酒をあおって奥の座敷で寝込んでしまいます


放蕩三昧という設定の月乃助さんですが素敵なイイ男の雰囲気で、ヤサぐれた人物には見えなかったのですが…

憐れっぽくない内面の孤独感をキーンと張り詰めて表現されていたように感じました



みね
は使用人の立場で、どケチな奥様に借金の申し出をするだけでも身が縮まる思いだったでしょうに、義理の息子が帰って来て不機嫌な奥様にピシャリと借金を断わられてしまい途方に暮れますガーン


追い詰められたみねは、懸け硯(かけすずり=ちょっとした小物入れのような持ち手がついた箱、引出しがついている)の中の30円の札束の中から一円札を二枚ぬいてしまいます

取り返しのつかない誤ちとわかってはいるが、"大つごもり" に恩のある育ての親家族を見殺しにはできない…


久里子さんの切羽詰まった演技に、会場は静まりかえりました
嗚呼、やってしまった……



みねがお金に手をつけた時、実は横で石之助が酔いつぶれて寝ていましたお酒

ピクリとも動かずに背中を向けて ずっと寝ていたと思うのですが、私は久里子さんの演技に気をとられていたので、もしかしたら、何か背中を向けながらの微妙な演技があったのかもしれません
すみません、見逃しました~あせる


…というのは、ネタバレになってしまいますが、石之助はすべての事情を寝ながら聞いていて承知して、結果みねを助けて自分は悪者になって去って行く、という結末だったからです


みね石之助は、最後言葉を交わすこともなく、目配せすることもなく、ましてや まさか愛が芽生えるわけでもなく、ちょっぴり物足りないような印象もありましたが、そのかわり余韻がいつまでも心の中で響いて、これが新派の美学なのだろうと考えました


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今の時代では考えられない 奉公先での厳しい労働や、主と使用人との絶対的な立場の違いなど…お芝居を見ると色々あらためて気づかされます

こういう時代があったことを忘れてはいけないなと思いました