通し狂言
雷神不動北山櫻
(なるかみふどうきたやまざくら)
市川海老蔵 五役相勤申し候
水天宮からタクシーで移動して…
(年の瀬ですので渋滞、それでも15分程で無事到着)
行って参りました~
そのうちの一部分が単独で上演される事が多いのですが、今回は「通し狂言」ですので 全部通しでやる、という事です
海老蔵さんが五つのお役を演じます
1. 早雲王子 はやくものおうじ
時の陽成天皇の異母兄
序幕で とっても素敵に登場
百姓達の為に雨乞いをしたりして良い人かと思いきや…
実は皇位に就けなかったことを恨んで、陰謀を企てる悪い王子
2. 安倍清行 あべのきよゆき
たぐいまれなる霊力を持つ陰陽(おんみょう)の博士
もし早雲王子が皇位に就けば天下が乱れると占いました
関白の文屋豊秀(愛之助さん)に連れられて登場
とても長く生きているらしく疲れた様子で「はぁ~」などと力なく現れますが、年寄りっぽくはなく美しい容姿
しかし色を好み、女性を口説く時は俄然張り切ってギンギラしています
3. 粂寺弾正 くめでらだんじょう
単独で上演される事が多い「毛抜(けぬき)」というお芝居の中心人物
皇位に就きたくて悪事を働く早雲王子に敵対する関白グループの文屋豊秀(愛之助さん)の家来です
同じく関白の小野春道のお姫様(豊秀の婚約者だが一向に輿入れしない) の訳を聞く為に小野家を訪れます
謎の病で姫の髪の毛が2メートルくらいボワーッと逆立つのを見た時の
驚きのポーズ表情まん丸な大きなオメメ
これぞ歌舞伎でしょう~
個人的に大興奮
面白くてたまらない瞬間でした
お姫様の髪の毛が逆立つ謎の病を思案しつつも、美少年に言い寄ったり、腰元を口説いたりするも あっさり振られる様子は、わかりやすく笑いを誘いました
妙にリアルでドキドキ
海老蔵さんの若さを感じる、今まで見た事のない「毛抜」でした
そんな海老蔵さんに呼応するように、
早雲王子の家臣を演じる獅童さんも、粂寺弾正に悪だくみを見破られて一本取られてアチャーッという表情がとても愛嬌があって親しみを感じました
ずいぶん前に「ピンポン」という映画に出てらした獅童さん、凄くアクの強いコワモテのキャラなんですけど最後にとっても素敵な至福の表情のシーンがあります
その時と変わらない純粋さを感じました
今回の海老蔵さんを観ていて、いつもと少し印象が違う気がしましたが…
歌舞伎の役者さん達は ものすごく深い深い引き出しをいくつも持っていて…
その時々で色々な物を出して演じ分けて、我々観客を楽しませる為に奮闘して下さっているのだなぁと思いました
その出し方も日々微調整可能かも…
安定志向な時もあるし、チャレンジ的な時もあるのかもしれません
あるいは、考えなくても自然に そのような流れが生まれるのでしょうか…
4. 鳴神上人 なるかみしょうにん
偉いお坊さん、帝に命じられて世継ぎの男子を誕生させます
皇位に就きたかった早雲王子に追放され、その事で朝廷に恨みを抱いた鳴神上人は龍神を封じ込めて都の人々を旱魃(かんばつ)で苦しめています
雲の絶間姫(くものたえまひめ)が使者となって鳴神上人のもとへ向かい、惑わせて見事に龍神を飛び去らせ雨を降らせます
さすが貫禄の玉三郎さま、美しくて気品に溢れる雲の絶間姫です
もう、どう考えても鳴神上人に勝ち目はありません
姫の色香に溺れ酒に呑まれて
やっと騙されたと気付いて 猛烈に怒る姿は、お気の毒だけれど痛快です
5. 不動明王 ふどうみょうおう
自らの陰謀がすべて露見した早雲王子と追っ手とのダイナミックな大立ち廻りの後で不動明王が降臨して大団円
真っ赤なライティングの中、不動明王は宙に浮かびます
キラキラが降りしきりました
歌舞伎座での このような演出は、少し驚きましたが新鮮でした
筋書きにもありましたが、
本当に歌舞伎座の一年を締めくくるに相応しい豪華絢爛な通し狂言
楽しませて頂きました