夕飯を食べてすぴすぴと眠ってしまった翔さん。頭を撫でて寝室の扉を閉める。



 「…俺の分もあったんだよねぇ」
 どうしてか、俺の分の手紙も入ってた。




 "翔くんの恋人さんへ
   僕がいなくなったら翔くんを守ってください
   いつか翔くんの大切な人がこれを読んでくれますように"




 「……あ、もしもし」
 『読んだんでしょ?手紙』
 用件を言ってないのに、見透かしたように笑いながら言われた。



 「二宮さん」
 『書いてたよ、確かに。確か…事故が起きる1週間前かな。何となく分かってたんじゃない?虫の知らせとか』
 「…そうなんですかね」
 『今となっては分かんないけど…そうやってさ、最悪のことも考えて毎日過ごすような人だったよ、俺の兄さん』
 「…」
 『ま、大事にしてよ、翔さんのこと』
 「言われなくても…」
 『翔さんの前だと大人だけどさ…俺の前くらいはまだまだ子供でいていいんだよ』
 「…」
 『ま、少し長く生きてるだけだけどね』
 ケラケラ笑ってそう言ってくれた。



 『そうだ。翔さんの仕事、決まりそうなんだ。今度の日曜日、空いてる?』
 「はい、大丈夫です」
 『面接、来てくれってさ。伝えておいて』
 「分かりました」
 『大事にしてね』
 「…」
 最後の言葉は、二宮さんからとも大野さんからとも取れる言葉だった。