引き続き山田俊一税理士の「難問事案のさばき方(第2集、一部第1集)、ぎょうせい」から、相続を取り上げます。

 

1 (戸籍を入れていない妻に、住んでいるマンションを引き継がせる方法)・・は? 

 ▽できるだけ公正証書で死因贈与契約を結んで仮登記をし、妻を執行者にしておくと、夫死亡のときには相続人の印をもらうことなく妻が移転登記をすることができる。

 但し、登録免許税が相続の5倍になること、相続では発生しない贈与税がかかるという負担が必要になる。

 

2 (代表者が会社に対して有する貸付金について返済される可能性はないが、相続のときに「貸し倒れ必死債権」として相続財産から除外できるか)・・。

 ▽相続税の財産評価基本通達に、回収が「不可能又は著しく困難なもの」は(相続財産の)元本に参入しないと定められているが、実際にこの認定を受けることは結構厳しい。

 このため、生前から贈与税の発生しない債権放棄、相続放棄や相続の限定承認、更に会社清算も考えることになる。

 

3 (相当多額の資産を有していた被相続人が死亡の2か月前に預金から1000万円を引き出していたが、それがどうなったのかが分からない)・・これは遺産になるのか。

 ▽本件では、相続人がこの1000万円を相続財産に含めた相続税を納付したが、これは実在しないとして更生請求や不服申立が考えられるが、「1000万円の遺産はなかった」ことを証明することは難しいのではないか。

 少なくとも、相続の申告のときに遺産に含まれていないという申告をするべきであった。2か月前の1000万円の引き出しならある程度は分かるのが普通・・ということが前提にあるように思う。

 

                                        

 

4 (亡父が詐取された不動産を取り戻すための弁護士費用)・・は不動産の「取得費」に当たるか。

 ▽長い時間を要した裁判の弁護団費用は、最高裁判決(H17.2.1)が、「取得費取得代金のほかその資産を取得するための付随費用の額も含まれる」としている。この「付随費用」に含まれる(山田税理士)。

 ブログ筆者の意見では、長期、高額の裁判を経た場合の常識的な考え方と思います。一方で、権利の回復等のために実際に裁判等が避けられなかったような場合を除いて、弁護士費用を取得費用と認めたくない税務署の考え方は変わっていないようです。

 

5 (亡父が妻のために老人ホームに支払った入居金は贈与か、その返還請求権は遺産か)・・。

 ▽老人ホームに支払った入居金は扶養のために支出した金額(扶養料)になり、その一部について返還請求権が発生したときは遺産になる。

 

6 (死因贈与契約に双方が捺印し、遺贈者が死亡した)・・とき、受贈予定者は死因贈与契約を解除できるか。

 ▽死因贈与契約は、遺贈予定者が死亡したときに効力が生じ、受贈予定者はその生前に自ら契約している。

 しかし、民法で死因贈与には遺贈の規定が適用され、履行が終わるまでは受贈を取り消すことができる。

 筆者の意見では、祖母が自分への遺贈分について、要らないから孫にやって欲しい・・というような場合のようです。